第2のアドゥワじゃ! 広島が11日から始まる秋季キャンプのメンバーを発表し、17年ドラフト入団で1人、山口翔投手(19)が選ばれた。細身ながら、しなやなか腕の振りから投げ下ろす真っすぐには力がある。中崎やアドゥワと同様に夏場まで「3軍」で過ごした若き芽が、鍛錬と競争の1軍キャンプでさらなる成長を目指す。

初の“1軍切符”にも、表情は硬かった。発表された秋季キャンプメンバーの中で、1年目を終えたばかりの6選手でただ1人、山口が選ばれた。リハビリ中の中村奨だけでなく、大卒のケムナや平岡の参加も見送られた。「1人なので緊張する。1軍でやってみたかったので、楽しみもある。その中で得られるものを得られるようにしたい」。鍛錬の場であると同時に、来春の1軍キャンプ参加を争う場。19歳右腕の気持ちも自然と高ぶる。

今秋ドラフトは即戦力と期待されるのはドラフト2位の九州共立大・島内くらい。4連覇を目指すためには、現有戦力の底上げは必至といえる。同様のドラフトとなった昨年は、秋季キャンプでアドゥワがアピール。翌年の1軍春季キャンプ参加からそのまま開幕を迎え、1軍フル登録。3連覇に大きく貢献した。

昨年のアドゥワや高橋昂同様、山口も実戦デビューの8月10日まで「3軍」で基礎体力強化やフォーム固めに明け暮れた。まだ体の線はほかの2軍選手と比べても細いが、佐々岡2軍投手コーチは「体がしなやかで柔らかい。まだばらつきがあるけど球質が強く、スピードも出ている」と目を細める。中崎や中村祐らも経験した日々。苦しさから思い出したくもない選手もいるが「1年あっという間だった。もうちょっと強化していたかったと思うところもある」と意識は高い。

佐々岡投手コーチは「まだいい面も悪い面もあるが、楽しみが大きいからこそ1軍キャンプに参加できる。経験をオフにつなげてもらいたい」と競争の場に送り出す。アドゥワと同じような成長曲線を描くことも期待されるが、19歳は「まずはケガなく、キャンプを完走できるように頑張りたい」と足もとを見つめる。緊張の中で実り多き秋とし、2年目の来季へつなげたい。【前原淳】

◆山口翔(やまぐち・しょう)1999年(平11)4月28日生まれ、熊本市出身。父の転勤で小4から広島に移住。「高陽スカイバンズ」で野球を始める。小6から熊本へ戻り日吉小、日吉中の軟式野球で主に投手。熊本工では1年秋からベンチ入り。2年春からエース。センバツは初戦で智弁学園に敗退。17年ドラフト2位で広島入団。1年目の今季は2軍で5試合、1勝2敗、防御率6・43。181センチ、76キロ。右投げ右打ち。