驚きの人的補償で巨人から広島への移籍が決まった長野久義外野手(34)。多くを語るタイプではないが、チョ-人的伝説のエピソードには事欠かない。「アイム長野!」と声高にアピールすることはないが「ディスイズ長野」の存在感は圧倒的だ。

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◆怪力 13年のグアム自主トレ中、当時のWBC日本代表の山本浩二監督が長野の1・5キロのマスコットバットを持ち「こんな重いもん、振っているのか?」と驚嘆させた。

◆神公認 13年10月に死去した川上哲治氏から「今の巨人のバッターで一番いいのは長野だ。あの外角打ちの技術はすごい。あれだけ離れて立っているんだから」と最後に名指しで絶賛を受けた。

◆半世紀以上ぶり 13年に、守備で「ライトゴロ」を3度完成。巨人では1943年の中島治康のシーズン4度以来、70年ぶりの快挙だった。

◆チョーさん超え プロ入りから5年間での767安打は、長嶋茂雄の763安打を超え、日本人歴代1位。

◆タイガーマスク 選手会長となった16年の春季キャンプで、寒風吹く日にカイロ1000個を自費で購入して、名を伏せて関係者や報道陣に提供。周囲には「僕じゃないですよ~」といいながらも、漫画「タイガーマスク」の主人公・伊達直人のようだった。

◆視力 センターの守備中にファウルボールが記者席に飛び込み、記者が捕ったのを見ると「ナイスキャッチでしたね」と試合後に声をかけた。約150メートル先の、ささいな出来事も逃さなかった。

◆察知力 経験値の少ない球場でも特性をインプットする。13年5月22日の楽天戦(Kスタ宮城)。楽天松井の打球が外野フェンスとラバー部に挟まったが、無理に探そうとせずにボールデッドを主張。エンタイトル二塁打とした。無理に取ろうとして時間を浪費すれば三塁打以上の可能性もあった。球場開場以来、初のケースに「審判の方にも『冷静だね』と言われました」。

◆サプライズ 多くの一流選手は内野席に年間シートを保有しているが、長野は東京ドームの右翼席最前列にシートを確保。長野にプレゼントされ、内野席のつもりで観戦に訪れた関係者は応援団の最前線に誘われ、驚く様子を外野守備に就く長野が楽しむ。

◆人心掌握 甲子園での阪神戦では虎党が陣取る右翼への守備に就くと、行儀よく? 帽子を取って一礼。巨人選手に手厳しい阪神ファンから拍手を送られることも多い。【広重竜太郎】