昨季限りでソフトバンクを自由契約となっていた摂津正投手(36)が8日、福岡市内のヤフオクドームで現役引退会見を開いた。「悔いはない。すっきりしています」と、すがすがしい表情で語った。エースとして貢献した摂津に対し、球団は3月に行われるヤフオクドームでのオープン戦で引退セレモニーを行うことを明かした。

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紺のスーツ姿で会見場に現れた摂津は自らマイクを持ち「引退表明」をした。

摂津 本日をもちまして現役を引退することになりました。本当に今までありがとうございました。

昨年11月に戦力外通告。現役続行を目指しトレーニングを続けてきたが、昨年末を区切りに引退を決意した。「正直、厳しいだろうな、というのはありました。不安もあったし、ずっとモヤモヤした気持ちはあった。悔いはない。今は意外とすっきりしています」。苑子夫人と2歳となる長女衣麻(えま)ちゃんから花束を受け取ると笑顔を見せた。「記憶があるか分からないが、昔ちょっと野球をやっていたんだなと思ってもらったらうれしい」と父親の顔をのぞかせた。

08年ドラフト5位、社会人・JR東日本東北から26歳でのプロ入りだった。「松中さん、小久保さん、杉内さん、和田さん、(斉藤)和巳さんとスター選手がたくさんいて、とんでもないところに入ってきたなと死ぬ気で頑張った。痛くても我慢してやった」。1年目から中継ぎで2年連続70試合以上に登板。先発に転向した11年からは5年連続で2桁勝利を挙げた。12年には17勝をマークし最多勝、沢村賞を受賞。エースとして常勝ホークスを引っ張った。

ここ3年は苦しんだが「すごい意味のある3年だった」と、その経験を今後指導者となった時の財産とする。今後については未定。三笠球団統括本部本部長は「セレモニーの形になる。活躍してくれたヤフオクドームでファンの前で最後の場を持ってもらう」と説明。新しいシーズンが始まっていることから試合でマウンドから投げるということは本人が固辞。3月のヤフオクドームのオープン戦で引退セレモニーの場を設ける。日程などは今後調整する。摂津も「何かしらできたらいい」と応援してくれたファンへ改めてあいさつをするつもりだ。

会見を終えた摂津は「ゆっくりしたいです。男女群島にいきたいですね」と行きたい場所に長崎県五島列島の南南西に浮かぶ島々で、釣り愛好者あこがれの釣り場の名前を挙げた。

通算282試合に登板し、79勝49敗1セーブ、防御率2・98。「10年間もやれるとは思っていなかった。背番号50番イコール摂津だと思ってもらえるように、少しはできたかな」。さわやかな最後だった。【石橋隆雄】