平成最後のキャンプで「Showa The Spirit」が継承される。昭和62年生まれの巨人山口俊投手(31)と野上亮磨投手(31)がノスタルジックなスタイルで調整を進めている。宮崎キャンプ第1クール4日目の4日、山口が3度目、野上が4日連続でブルペン入り。いずれも150球以上を投げ、すでに通算で400球を超える投げ込みを敢行する。前日3日の若手主体の紅白戦は出場全選手が平成生まれで、ピチピチ感満載も“昭和の男たち”だって負けてはいない。

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威勢のいい野太い声がブルペンに響いた。山口が「よいしょ!」と叫べば、野上は「よっしゃ!」と力んだ。一喜一憂を交えながら、汗を飛び散らせること約1時間。じっくりと向き合った。4日間で山口はチーム最多の459球、野上は426球。野上は3日の居残りも含めると500球近くに及ぶ。「疲れた時にいい球を投げるために、フォームを固めないといけない」と口をそろえ、すがすがしい汗をぬぐった。

レトロな調整法は先輩から引き継いだ。山口はDeNA時代に「ハマの番長」から学んだ。「三浦さんが投げていく中で(フォームを)作っていくところを見てきた。意識を持ちながら投げる。今になってやっとその意味が分かってきた」。長丁場を戦い抜くためのケガ防止を一番に挙げる。「正しいフォームで投げれば何球投げても壊れない。リスクは分かっていますし、今は100%故障しない自信がある」と言い切るほどの確信を持って取り組む。

野上もエースの背中から知恵を得た。西武時代に西口、涌井が黙々と腕を振る姿を目の当たりにした。3年目の11年から投げ込みを重視し、1日400球を投げることもあった。目的は「投げることでいろいろな筋力がつく。ストレッチにもなるし、疲れていても力の入る部分がある」とトレーニングの一環だと強調。「俺たちは昭和的だね」と話す2人は、強くたくましくなるために、投げ込みを推奨する。

ただ単に球数を増やせばいいというものではない。当然、コンディション管理は大前提にある。原監督は「テーマですよね。目的というものを、どこに比重を置いているのかを見ている」と理解し、尊重している。故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る。「Show The Spirit」を体現するために、昭和の男たちが腕を振る。【桑原幹久】

◆Show The Spirit 巨人原監督は02年の第1次政権からスローガンに掲げ続けてきた。第2次政権からは06年が「over the top」07、08年は「奪回」09年は「維新」10年は「原点」11年は「結束」12年は「躍動」13年は「躍進」14年は「雄志」15年は「新成」も加え、第3次政権となる今季は「和と動」を掲げた。