どっきどきのデビュー戦で躍動した。巨人ドラフト1位の高橋優貴投手(22=八戸学院大)が宮崎キャンプ第1クール最終日の5日、シート打撃に初登板。先輩を相手に緊張の色は隠せなかったが、陽岱鋼、阿部、同学年の岡本から三振を奪うなど、打者7人を1安打1四球に抑えた。スクリューボールはじめ持ち球を駆使した堂々たる投球で首脳陣の評価も高まり、開幕ローテ入りへ大きな1歩を踏み出した。

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自然と力が入った。高橋はマウンド上でボールを握ったまま、捕手へサインを出した。「緊張していましたし、慣れていないので、グラブにボールを入れたままサインが出せなくて…」。投手が自分で組み立てを考える狙いで、3日の紅白戦から導入された取り組み。先頭の同学年の岡本を歩かせると、初々しい苦笑いが漏れた。それでも「テレビで見て、すごいなぁという選手ばかり。こういうチャンスもなかなかないと思うので、楽しんでやろうと思いました」と無我夢中に腕を振った。

伸びやかな速球と鋭角に曲がるスライダーでカウントを作り、得意球のスクリューボールで緩急をつけた。1巡目では陽岱鋼を2球で追い込みスクリュー、阿部からはフルカウントからワンバウンドの外角スライダーで空振り三振を奪った。2巡目の最終打者の岡本には内角を見せてから、低めいっぱいのスクリューで見逃し三振。「前の打席でボールになってしまったので、それよりも少し高めに投げようと思いました」と宝刀を狙い通りに操った。

悪戦苦闘を経て、好結果をつかんだ。「いつもなら投げていない時期なので、難しい部分はありました」。大学時代の拠点の青森・八戸は寒さが厳しく、ボールを握るのは宮崎でキャンプを張る3月から。動きすぎによる故障を防ぐために、準備運動を入念に行うなど最善の注意を払いながら、調整ピッチを早めた。球威を求め2段モーションにも挑戦。工夫が成果となり「やってきたことが、少し正しいかなという部分もあった」と自信が芽生えた。

首脳陣からも笑みがこぼれた。原監督が「非常にいいスタートを切った」と言えば、宮本投手総合コーチは「初登板でここまでやるとは、彼の持っている何かを感じた。先発ローテーションの『ロ』の字はくっきり見えたよ」と喜んだ。10日の紅白戦で先発予定。グラブには、強い意志で物事を達成するまで変えないことを意味する「磨穿鉄硯(ませんてっけん)」の刺しゅう。「何度も対戦したら抑えるのは厳しいと思うので、もっと練習したい」。1歩ずつ階段を上がっていく。【桑原幹久】

 

<巨人の先発ローテーション>

開幕投手に内定するエース菅野、山口は確定。昨年、自己最多の6勝の今村、17年に13勝の田口の左腕2人が続き、経験豊富な岩隈、野上らも候補。外国人選手は枠次第だが、メルセデス、ヤングマンが候補に挙がる。若手では3年目の高田、大江がアピールに燃える。好投が続けば高橋が食い込む可能性もある。