未来の安打製造器だ! 中日のドラフト1位、根尾昂内野手(18=大阪桐蔭)が10日、2軍の沖縄・読谷キャンプでプロ初の屋外フリー打撃を行い、バットマンの片りんを見せた。

右ふくらはぎ肉離れで別メニュー中のため、ランチタイムにメイン球場を使った。直球のマシンを相手に、力をセーブしながら32スイング。明らかな安打性は13本で、外野の間を鋭い弾道で抜く打球も3本放った。

うなったのは阪神嶋田スコアラーだ。「6~7割の力だろうけどスイングスピードが速いし、バットコントロールがいい。ポイントへのバットの持っていき方が篠塚さんみたい。内角は体の回転でくるっと打てそうなタイプにみえる」。首位打者2回の元巨人の天才、篠塚和典氏(61=日刊スポーツ評論家)になぞらえた。

だが当の根尾は苦笑いだった。「納得のいくものはなかったです。イメージと全く同じではないし、距離感がズレているところもあった。思っている以上に体は動いてなかった」。本調子にはほど遠い状態。だが、センスはあふれ出た。

森野2軍打撃コーチは「お前も人の子だな」と声を掛けた。読谷球場では異例の約1200人の面前で初打撃。「だいぶ緊張していた。室内で打っていたときとは別人。らしからぬ打撃だった」と笑顔でフォローを入れた。ベストな状態でなくても、虎の007に“篠塚氏タイプ”と言わしめた才能はやはり非凡だ。

雨で流れ続け、待ちわびたメニューに18歳も少し喜びをにじませた。「スパイクを履いて打って、うれしいという気持ちが当たっているか分からないですけど、前に進んでいるのは実感しました」。バットで大阪桐蔭を甲子園優勝に導くこと3度。やはり、並のルーキーではない。【柏原誠】

 

◆中日与田監督(根尾について)「情報では順調に回復している。それだけで十分なので、技術的なことは目で確認してからコメントさせてください。毎日、順調に回復しているということなので、こちら(1軍)に呼べるレベルになれば呼びます」

◆根尾と同じ左打ちの強打者だった小笠原2軍監督も上々の評価をした。「初めてで人もたくさんいて、この内容はうのみにしないけど、いいものは見られたかな」。14日からの第3クールも序盤は2軍全体練習には加わらせない。新しいメニューが入った場合、それを数日続けて体の反応を見ながら、次の段階に進めていくという。

▼巨人・篠塚和典 1957年(昭32)7月16日生まれ、千葉・銚子市出身。銚子商で夏の甲子園で優勝するなど好打者として活躍も、胸膜炎の影響が心配されていた。そんな中、長嶋監督(当時)が野球センスを買い、周囲の反対を押し切って75年ドラフト1位指名。巧みなバットコントロールで広角に打ち分け、80年に二塁の定位置を奪取した。 81年は阪神藤田平と首位打者を争い、1厘及ばず3割5分7厘でリーグ2位も一気に才能が開花。この年から8年連続打撃ベスト10入りし、7度3割以上をマークした。主に2、3番を打ち、84年(3割3分4厘)、87年(3割3分3厘)の2度首位打者に輝いた。

5度のベストナインのほか、二塁手として4度ゴールデングラブ賞を受賞するなど華麗な守備でも知られた。94年に現役を引退。通算1651試合で1696安打、92本塁打、628打点、生涯打率は3割4厘。