4年ぶりに復帰した巨人原辰徳監督(60)が21日、世界一に輝いた09年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で監督、投手コーチとしてタッグを組んだ山田久志氏(70=日刊スポーツ評論家)と対談した。23日のオープン戦開幕を前に、FAで獲得した丸の起用法や、広島V4阻止への思い、チーム状況について語り合った。【取材構成=寺尾博和、前田祐輔】

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山田氏 3度目の監督就任。選手に対する今年の第一声は何でしたか。

原監督 僕も想像できない言葉だったんですけど、とにかく選手たちにはノビノビとハツラツと野球をやってくれと。私もそういう風にやると。なぜか、原点なんでしょうね。

山田氏 最近見ていると自然体ですよね。

原監督 そう思います。

山田氏 構えがなくなりましたね。私から見ても。

原監督 だから今、語弊があるかもしれないけど楽しくてしょうがないんです。ゼロになったから。例えば1回目の監督を堀内さんにバトンを渡した時の2年間は、勉強しようとか、自分の欲というか、高みに上がるというものがあったんです。そういうものがまったくなかったですから。非常にピュアな気持ち。休息って人生にとって大事ですね。

山田氏 監督で大事なことは発信力。12球団見渡して発信力のトップは原監督です。それは間違いない。

原監督 いやいや。僕の中で3年間は空白ですから。いいイメージも悪いイメージもないわけです。例えばカープが3連覇している。これもイメージがないんです。漠然とファンという立場で見ていた。しかし3年前に僕が監督やっている時は『カープはそんなに強いチームじゃなかったぜ』といきなり言いましたよ、選手の前で。僕はミーティングでちょっと言いすぎるところがあるから(笑い)。

山田氏 マツダスタジアムで采配を振るのも3年ぶり。この3年で広島の応援もだいぶ変わりましたよ。

原監督 真っ赤ですもんね。できれば五分ぐらいの勝負はしたいと思います。

山田氏 メンバーを見ると非常にバランスがいい。

原監督 チームは間違いなく若返ってます。(阿部)慎之助、亀井、彼らに頼るチームではなくなった。ベテランの内海、長野も移籍した。ベテランクラスに頼ることがなくなっているから、すごくチームは若いですよ。

山田氏 阿部はどうするのですか。

原監督 僕が監督になった時に電話をかけてきて、来年はキャッチャー一本でやりたいと。分かったと。しかし君にはブランクがある。肩とキャッチャーとしてのスタミナはしっかり磨いておいてくれと。そうしないとゲームでは使わない。慎之助の力は必要。一生懸命やってます。でも戻らなければ彼が正捕手という形ではないでしょうね。

山田氏 監督が常に言う実力至上主義ですね。

原監督 はい。実力至上主義がチームの輪をつくると思いますね。

山田氏 丸の存在はどうですか。

原監督 僕もジャイアンツに長くいて、FA選手ですんなり力になった人は小笠原ぐらい。少なからず心配していたのですが、彼は言動、練習すべてにおいて彼のペース。むしろ彼のペースがジャイアンツのペースになっている。

山田氏 丸と坂本の打順は気になるところです。

原監督 (坂本)勇人と丸は同世代なんです。同格のリーダーで、頼り、頼られることが大事。勇人には丸をカバーしてくれと。だから丸を2番に置きたい。お前さんは3番で丸をカバーしてくれと。丸を少し楽な状態にできれば。

山田氏 ピッチャーとしては丸2番は勘弁してくれと思います。たまらない。

原監督 3番バッターが2人いる。だから初回は必ず2点を取りにいく野球をする。1点を取りにいく野球はしない。したがって丸2番。勇人3番、4番岡本。そして岡本のあとを誰がカバーできるか。5番バッターだと思いますね。

山田氏 楽しそうですね。

原監督 最初に言ったじゃないですか(笑い)。

山田氏 私は逆だと思っていた。坂本1番で丸が3番かと。

原監督 それだと面白みがない。野球そのものがガラッとは変わらない。せっかくこれだけのメンバーがいるわけですから。勇人も勝つことに飢えている。

山田氏 投手陣は。

原監督 ブルペンでしょうね。昨年の反省材料はブルペン陣の防御率を含めて、落としたゲームが多いということですよね。

山田氏 9回はどうするのですか。

原監督 そこもつくらないといけない。7回、8回も。吉川(光)は中に入れました。山口(鉄也)のようなピッチャーになってくれと。若い大江という投手もいる。クローザー候補のクックも可能性はあると思います。あとは桜井、鍬原。このあたりがどう絡んでくるかですね。

山田氏 先発はだいたいそろっているでしょう。

原監督 菅野、山口、外国人2人の4人は堅いところですね。あと2枚は新人の高橋、田口、今村。それに岩隈ですね。

山田氏 新外国人のビヤヌエバは。

原監督 いいと思います。まずは27歳と若い。向上心がありますし、妙なメジャーのプライドはありません。非常に楽しみです。

山田氏 昨年はドラフト会議にも出席して、12球団の監督の中で一番存在感があった。周りからは全権監督と言われてますが。

原監督 全権監督かは分かりませんけど、ドラフトは非常に重要だと思います。このところジャイアンツのドラフトは果たして成功しているかと言ったら、そこは成功してなかったと思いますね。もしそういうことであるならば、自分も参加したいと。スカウトの人たちとよく話をしてですね。育成も補強という部分も、現場が中心となって、現場主導の中でやっていくことが大事だと思います。