新天地で“完全デビュー”だ。日本ハム金子弌大投手(35)が3日、オープン戦のDeNA戦(札幌ドーム)で、移籍後本拠地初登板。先発のマウンドに上がり、3回を無安打無得点、1人の走者も許さない投球で、約1万5000人のファンを魅了した。すでに先発が決定している開幕2戦目オリックス戦(30日・札幌ドーム)へ向け、同じ舞台で最高の予行演習となった。

  ◇    ◇    ◇

新しい本拠地のファンへ、あいさつ代わりに披露した36球は“完璧”だった。金子が打者9人を多彩な球種で翻弄(ほんろう)した。1回を3者凡退で終えると、2回も相手中軸に付け入る隙を与えず。「いい意味で緊張感を保ったまま、力まずに投げられた」。17年セ・リーグ最多安打&打点のロペスにはスライダー、カーブと変化球で攻め、最後は外角低めにフォークを落とした。

ポーカーフェースが崩れたのは、3回だった。1死から迎えた伊藤光は、昨季途中までオリックスでバッテリーを組んでいた元相棒。初球はこの日最速の146キロ。2球で追い込むと、ニヤリと笑った。2ボール2ストライクとなり5球目。「今までたくさん(球を)受けてもらって、チェンジアップで打ち取る割合が多かった」と、コンビ時代の配球を振り返り「最後は、そのチェンジアップで決めたいなと思ったら、力んで高めに行ってしまった」。結果は左飛。「あの打席だけは楽しんで投げられました」と笑った。

14年沢村賞など多くの実績があるだけに、一見、近づきがたい独特のオーラをまとうが、若い世代への思いやりを随所に感じる。リードした23歳の石川亮は「型にはまらず、いろいろなアイデアがある方なので、僕のような若手の意見もおもしろがって聞いてくれる。受けながら勉強させてもらっています」と、一流の教えに最敬礼だ。

オリックス時代の札幌ドームの成績は13試合で4勝5敗1セーブ。「札幌ドームで三塁側からマウンドに上がったのは初めてだったので、多少違和感はあったけど、マウンドに上がってしまえば風景は一緒。しっかり打者と対戦できました」。シーズン初登板となる開幕2戦目オリックス戦へ向け「今日がピークにならないよう、もっと上がっていけるよう調整していけたら」と、高みを見据えた。【中島宙恵】

◆金子の札幌ドーム 公式戦では13試合に登板し、4勝5敗1セーブ、防御率3・35。シーズン途中から守護神となっていた09年にはセーブも記録している。斎藤との投げ合いとなった11年9月24日は、2安打完封勝利。大谷(現エンゼルス)が「4番・投手」で出場した17年10月4日は、ともに一人で投げ抜く投手戦の末、敗れている。