巨人阿部慎之助捕手(39)が「今季1号」を放った。守備から途中出場した7回2死一塁、ヤクルト高梨の140キロ直球をフルスイング。本拠地・東京ドームの大声援を切り裂き、右中間席に突き刺した。通算400号に王手をかけているベテランが、昨年と同じ3月3日の1発で存在感を示した。

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リズミカルなズンバミュージックが鳴りやんだ直後だった。阿部が完璧な一振りで仕留めた。7回2死一塁。ヤクルト高梨の初球、高め直球を強振した。「外野の間を抜けたかなと思った」と一塁へ駆けだしたが、打球は勢いに乗ったままスタンドに到達。沈黙が続いていた打線を一喝するかのような1発に、悠然とダイヤモンドを周回した。

プロ19年目の今季は捕手復帰とともに史上19人目の400本塁打まで、あと1本と迫る。予行演習の“今季1号”は「400号になっちゃったな」とジョークで振り返った。大記録の早期達成を念頭に置く。「平成のうちに達成できればいいよね。チームのためにも、自分のためにも」。入団1年目の平成13年4月のプロ1号から、399本塁打は平成に積み上げてきた。

新元号に改元される前の4月30日までの開幕から26試合での達成を狙う。過去18年間は06、11、15、16、18年以外の13シーズンは4月までに1号を放っている。実績から「平成400号」の達成確率は72%。原監督もこの日の1発に「見事でしたね」と大きくうなずいた。

登場曲に選んだズンバミュージック「Azukita」は開幕弾も予感させる。開幕戦で1号を放った17年1月のグアム自主トレ中に現地のショッピングモールでフィットネスBGMとして耳にした。吉兆を呼び込む選曲に「テンポがいいし、テンションも上がる」と今季から採用を決めた。球団では王、長嶋に次ぐ大記録を「平成の阿部」が仕留める。【為田聡史】

◆ズンバ コロンビアのダンサー兼振付師のアルベルト・ベト・ペレズが創作したフィットネス・プログラムの名称。エアロビクスなどのフィットネス、エクササイズプログラムよりもダンスステップを基本としている。BGMは主にラテン音楽が使用される