育成から3月に支配下登録された巨人坂本工宜投手(24)が、開幕1軍に大きく前進した。

ソフトバンクとのオープン戦の5回から登板し、2回5奪三振。決め球チェンジアップを軸に、連続無失点を4試合に伸ばした。

3月までに支配下登録された選手(再登録は除く)が開幕1軍をつかめば、巨人では08年隠善智也以来11年ぶりで、投手では初。学生時代は無名だった右腕が“ジャイアンツドリーム”をつかみにいく。

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臆することなく腕を振った。6回1死、坂本工はデスパイネを追い込み、最後は、ど真ん中のチェンジアップで空振り三振。最速145キロの直球と縦に大きく割れるスライダーを中心にカウントをつくり、チェンジアップで三振を積み上げた。日本一王者に顔色一つ変えず、2回5奪三振で無失点。「1人1人に向かっていこうという気持ちで投げたことが、いい結果につながりました」と汗をぬぐった。

地道な努力が、自信を裏付ける。関西学院高時代は控え外野手で、準硬式野球部に所属した関学大2年から投手に転向。その秋から兵庫・西宮市の野球専門施設「ベースボールメディカルセンター」に通い始めた。動作解析などで、体感球速を速く見せるフォームを追求した。

プロ入り後も寝る間を惜しんで通った。2年目の昨年1年間、片道3時間、約1万5000円をかけて月曜の休日は全て同施設へ足を運んだ。1時間1万円の料金を払い、5時間指導を受けた。かかった費用は1年間で合計約120万円。幼少期からためてきたお年玉を削ってでも、夢をつかみたかった。

キャンプからアピールを重ね、2日に支配下登録をつかんだ。オープン戦でも4戦連続無失点。原監督は「成長の跡は見られますよね」と評価した。「与えられたところで結果を残すだけ」と謙虚な24歳。夢に見た開幕1軍が、手のかかるところまでやってきた。【桑原幹久】

◆坂本工宜(さかもと・こうき)1994年(平6)8月19日、滋賀県高島市生まれ。関西学院高では控え外野手。関学大では準硬式野球部に所属し4年春にMVP。16年育成ドラフト4位で入団。最速149キロ。持ち球はストレート、スライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップ。176センチ、82キロ。