矢野阪神が劇的なサヨナラ勝ちで開幕戦を飾った。1-1同点の延長11回、代打鳥谷敬内野手(37)の三塁打から相手暴投で決勝点をゲット。プロ16年目で初めて開幕スタメンを外れた男が、意地の一撃で矢野燿大監督(50)に初陣勝利を届けた。満員札止めの京セラドーム大阪に、今年最初の六甲おろしの大合唱。最下位からの頂点へ、最高の弾みがつく球春到来だ。

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阪神矢野監督が執念のタクトで一生モノの「指揮官初白星」を挙げた。劇的勝利直後、ナインとハイタッチ。白い歯を見せ、満面の笑みがこぼれる。「ちょっと騒々しい勝ち方でしたけど何でもいいです、勝てたので。一生忘れない1勝になる」と声を上ずらせた。

矢野阪神の戦いを凝縮した白星だった。1点を争う好ゲーム。「本当に投手陣がよく頑張ってくれた。点をたくさん取って勝てるのが一番いいけど、うちの今年はこういう試合をもぎ取っていくのが大切なポイントになってくる」。ディフェンス重視でしのいで、勝機を探る。泥臭い試合運びこそ今年の戦い方になる。

昨年10月中旬に監督に就任。東京に行けば多忙の合間を縫って野村克也元監督に会いに行ったという。現役時に薫陶を受けた恩師だ。「俺が野村さんによく言われたのは『あんまり球が速くない投手をどうするかは、お前にとってすごくいい勉強になる』」と明かしたこともある。この日も現役時と同様の守り勝ちだ。

心からアプローチする指揮官だ。「楽しむ」をテーマに掲げ、この日も「俺自身は緊張しながらも楽しめた」と振り返った。最下位から巻き返す1年。ナインには祝福をあらかじめ予定して前祝いする「予祝」を勧める。実は小さな奇跡も起きている。開幕1軍に入った江越は言う。「いいことを信じてやればかなう。2軍戦でホームラン打てたりとか、開幕1軍とか思ったことが本当にできた」。20、21日の2軍戦で3本塁打を放ったのも、前祝いの成果だという。残り142試合。全員で喜びを積み重ねていく。【酒井俊作】