「台湾の大王」が故郷のレジェンドの前でヒーローになった。日本ハム王柏融外野手(25)が、ソフトバンク2回戦(ヤフオクドーム)の延長11回、右前へ来日初の決勝打を放った。試合前には、台湾の大先輩でもあるソフトバンク王貞治会長と初対面してあいさつした。特別な一戦に勝負強さを発揮し、思い出深い福岡の夜となった。

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敵地でのヒーローインタビューに、気恥ずかしそうな笑みを浮かべた。延長戦を制する決勝打を放った王柏融は、何度も「謝謝」と、福岡まで応援に駆けつけたファンに繰り返した。「みんなで、全員の力で1点を取れた。均衡を破れて本当に良かったです」。泥臭く奪った勝利に、喜びもひとしおだった。

2夜連続で、試合は延長戦にもつれた。同点で迎えた延長11回。無死一、三塁の絶好機を相手のファインプレーでつぶし、2死一、二塁で迎えた第5打席だった。「4度も凡退していたので、絶対に打ってやるという気持ちだった」。追い込まれてからの4球目。ソフトバンク松田遼の変化球を、右前へはじき返した。落ちきらなかったフォークの失投を、しっかりとバットで拾い、これが来日初の決勝適時打に。チームに4試合ぶりの白星をもたらすと、大騒ぎのベンチを横目に普段はクールな表情が和らいだ。

この日、故郷・台湾のレジェンドと初の対面を果たしたばかりだった。練習前に「とても偉大な先輩」というソフトバンク王球団会長にあいさつし、大感激。同会長は、台湾からの挑戦者を温かく迎えてくれた。「『シーズンは長い。挫折は必ずあるので、くじけずに頑張ってくれ』と励ましてくれました。王さんの言葉を頭の片隅に置いて頑張っていきたい」。日本で戦っていく上で、ありがたい金言を授かった。

17年侍ジャパンとの壮行試合に台湾代表として出場し、楽天則本からバックスクリーンへ逆転2ランを放ったのも、このヤフオクドームだった。この日、王球団会長を「だんだん(日本球界に)慣れてくるんじゃないかな」と、うならせた「台湾の大王」は、日本球界にその名を知らしめた場所に、再び名を刻んだ。【中島宙恵】