阪神に頼れるエースが帰ってきた。右前腕打撲で戦列を離れていたランディ・メッセンジャー投手(37)が復帰登板でDeNA打線を封じ込めた。苦しい台所事情だったことも考慮し、1人で投げきることを決意。9回3安打1失点で2年ぶりの完投勝利を挙げた。チームは連勝で令和初の貯金生活に突入。首位巨人まで2・5ゲーム差とセ界頂上も見えてくるウハウハの貯金ウイークや。

メッセンジャーの気概が詰まった114球だった。「1本目を打たれた後も、1点取られた後も、この試合は自分で投げきるという強い気持ちがあった」。序盤からテンポよく投げ込んだ。ゴロアウトの山を築き、5回までノーヒット。6回先頭の伊藤光にポテンヒットを許し、7回に連打から1点を失ったが、気持ちは切れなかった。9回3安打1失点。今季2勝目は、17年8月4日のヤクルト戦(京セラドーム大阪)以来、2年ぶりの完投勝利だ。

突き動かすのは「オレがヤル」という思い。「エースとして何年も貢献してきたと思っている。できるだけ早く戻って貢献したい」。4月19日巨人戦で打球を受け、右前腕打撲で離脱。張りがなかなか取れなかったが、はやる気持ちを我慢しノースローで治療に専念。同26日に投げ始め、2軍戦を経ない異例調整での復帰もチーム愛がにじんだ。

チームではこの日、救援陣の一角、岩崎がインフルエンザA型で離脱した。前日まで3連投していたジョンソンは温存策のためベンチを外れていた。岩崎と同じくインフルエンザで5日の先発は岩貞から高橋遥に変更された。落とせばショックの大きな一戦だったが、大黒柱は、苦しい台所事情で奮闘。虎を令和初の貯金生活突入へ導いた右腕に矢野監督も「みんな休養できたし、ランディ自身も帰って来てすぐに、こういう投球ができて大きい」と最敬礼だ。

来日10年目を迎え、国内FA権を取得。「日本人扱い」となった助っ人のおとこ気を、皆が受け止めている。「『オレがヤル』という強い気概、他の投手の手本になるハートの持ち主であること」(谷本球団副社長)も契約更新の決め手になった。この日のお立ち台ではメッセンジャーに加え、栗山通訳と福留も「I’m Finally Nihonjin」と書かれたTシャツを着ていた。実はベンチ裏では、トレーナー陣も同じTシャツを着用。メッセンジャーを中心にチームは一丸となっている。

甲子園では昨年5月15日のDeNA戦以来、約1年ぶりの勝利。妻ベネッサさんと子どもたちも応援にかけつけた。「これだけのファンの皆さんがいて、こどもの日のイベントで、家族も見ている前でこれだけのピッチングができた。最高の気分でした」。最高の勝利を運んだ男は、家族から抱きつかれ、最高の笑顔を見せた。【磯綾乃】

▼メッセンジャーが来日通算勝利を97とし、通算100勝へあと3とした。完投勝利は17年8月4日ヤクルト戦での完封以来2年ぶり14度目。失点しての完投勝利となると、13年7月5日広島戦1失点以来、6年ぶり。

▼メッセンジャーはDeNA戦で自身カード別最高の通算24勝(8敗)をマーク。防御率2・30も対セ球団では最高だ。これでこのカードは、18年4月5日から7連勝となった。

▼来日以来10シーズンで、5月の通算防御率2・73は月別最高(3月と4月、9月と10月はそれぞれ合算)。上位追走に心強いデータだ。