笑顔なき、タイ記録だ。法大・安本竜二三塁手(4年=静岡)が5回、一時同点の2ランを放った。

前カード慶大1回戦からの5試合連続本塁打は、17年秋の慶大・岩見雅紀に並んだ。試合は敗れ、立大に連敗。2カード続けて勝ち点を落とし、連覇へ黄色信号がともった。慶大は東大に大勝し、勝ち点3の単独首位。柳町達三塁手(4年=慶応)が2安打を放ち、通算100安打まで1本とした。

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大正時代に始まった東京6大学野球の歴史で、たった2人しかいない。3-5の5回2死三塁、安本が同点2ランを放った。カウント1-1から立大・栗尾の甘く入った球を「完璧に捉えられた」と、左中間スタンドへ高い放物線でたたきこんだ。3回には一時逆転の2点適時打。堂々と3番を張るが、昨秋までは通算11試合のみで本塁打0。突如覚醒の感が漂う。

好きなプロ野球選手はソフトバンク柳田。「自分のタイミングで振ること」を大事にしている。2月の鴨川キャンプ。当時は、まだ副部長でネット裏から見ているだけだった金光興二監督代行(63)の目にも「ヘッドスピードが速い。打球音が違う。右中間にも飛ぶようになった。投手の右左、関係なく打てる」と映った。4年春の開幕・東大戦。スタメンをつかんだ。

順調な滑り出しではなかった。2試合で7打数2安打といまひとつ。「打ちたい」が先走った。「ラストイヤー。腹をくくろう。結果を受け入れるしかない」と開き直った。すると、次の慶大戦から本塁打量産。心と体のバランスを取り戻し、力を解放できた。

静岡から上京した3年前。「1年生からバリバリ活躍したかった。無理でしたけど。レベルの違いを感じました」。悔しさを抱えながらも野球を続けられたのは、周りのおかげだ。「両親は良い意味で何も言わなかった。神宮でプレーをするのが恩返しと思ってました」。将来は未定だが「この春次第。とことん上でやりたい」と強調した。強烈なスイングで、野球人生の未来を切り開こうとしている。【古川真弥】

 

◆安本竜二(やすもと・りゅうじ)1997年(平9)5月28日、静岡市生まれ。安倍川中から進学した静岡高では、堀内(現楽天)と同期。2年夏から3季連続で甲子園出場。3年春8強。180センチ、85キロ。右投げ右打ち。

 

法大・金光監督代行(安本に)「ここに来て本来の良さが出ている。あとは勝ちにつながれば、もっと成長できる」