<ヤクルト3-5広島>◇29日◇神宮

「真っ向勝負」といえば格好いいが、明らかな“格上”と対戦する時は“勢い”だけに頼ってはいけない。5回2死一、三塁からヤクルト先発の高橋は、広島の4番鈴木に、5球連続の直球勝負を挑んで左翼線に同点二塁打。高橋にとって格好いいはずの「真っ向勝負」は、「無謀な勝負」に変わってしまった。

やはり「格の違い」は否めない。第1打席に初球の150キロ直球をバックスクリーン右へ2ラン。第2打席は本塁打された直球で果敢に攻め、見逃し三振を奪っていた。そして手痛い二塁打を打たれた3打席目を迎えた。

打席内容を振り返る。初球は外角直球がボール。2球目は内角直球を見逃しストライク。3球目は内角直球がボール。問題なのは4球目で、内角高めの直球に対し、どん詰まりのファウルだった。投げ終えた高橋は「どうだ!」と言わんばかりの雰囲気で仁王立ち。しかし、怒らせていけない格上の相手を怒らせてしまったように見えた。

チャンスの場面では、鈴木はセンターから逆方向を狙ってくる。それでも本塁打する力があるからだ。しかし、だ。まさかの直球で“オラついた”高橋の姿に火が付いたのか、直球一本に絞ったような強引な引っ張りのスイング。148キロの内角球に対し、バットを折りながら左翼線に運んだ。もう少し甘ければ、場外に飛ばされたようなド迫力のスイングだった。

本塁打以降の2打席で11球を投げ、変化球は1球だけ。しかも直球のほとんどが内角だった。これだけ偏っていては、抑えられるものも抑えられない。追い込んでから変化球でかわしていれば、高い確率で打ち取れていただろう。続く西川には内野安打で2点を勝ち越され、その後も2連続四球で降板。あっさり格の違いを見せつけられ、チームの13連敗が決まった。【小島信行】