<ヤクルト0-13広島>◇30日◇神宮

ヤクルトが高卒2年目でプロ入り初先発の広島・山口に対し、7回でわずか1安打に抑え込まれた。連敗中でチーム状態が悪いとはいえ、目を覆いたくなるような“やられっぷり”。序盤から得点差もあり、出塁したのは3回の四球と7回の安打のみ。クイックモーションや投球術、フィールディング技術がどうなのかが分からず、総合的な判断はできない。しかし、直球の質がよく、将来が楽しみな投手なのは、初先発した内容だけでも判断できる。

どうして打てなかったかが、はっきりしている。140キロ台後半の直球にキレがある。7回で降板するまで打者23人に対し、直球で13個のアウトを奪った。さらに圧巻なのが、8奪三振のうち、直球で奪った三振が6個。しかもそのうちの5個が、ボールゾーンで空振りさせた三振だった(見逃し三振が1個)。

山口と初対戦する打者の心理を考えてみる。まずはどんな「持ち球」があって、球威や制球力がどうなのかを考える。当然、スコアラーからの報告もあるだろう。それでも変則モーションでもなく、極めてオーソドックスな本格派で、特別な対策はないだろう。打者の興味は「どんな直球なんだろう」に尽きるのではないか。

追い込まれたカウントで打者の多くは、とりあえず直球にバットが出るように備え、変化球に対応しようとする。データの少ない初対戦の投手となればなおさら、その傾向は強くなる。そんな構図の中、ボールゾーンへの直球で5個の空振り三振を奪っているのだから、キレのいい直球を投げる証拠だろう。

身長は181センチ。現代のプロ野球界ではそれほど長身の部類には属さないが、手足が長いオーバーハンドで、打者は角度を感じそう。95球で降板し、最後は球のキレも落ちていたが、初先発という状況を考慮すればスタミナも備えていそう。次回の登板が楽しみになった。【小島信行】