日が落ちきらない球場がドッと沸いた。0-0の1回1死一、三塁。阪神の4番大山悠輔内野手(24)が巨人ヤングマンの3球目、高めスライダーをすくい上げた。

左翼フライかと思われた打球は、甲子園独特の浜風に押されてスタンドイン。先制の9号3ランになった。「打ち方はそんなに良くなかったけど、風とファンの声援に乗って入りました」。序盤から宿敵に先制パンチを浴びせた。

9試合連続でHランプを光らせた若き大砲は、これで終わらない。5回の3打席目には無死三塁からスライダーをはじき返して効果的な中前適時打。4月18日ヤクルト戦以来、今季最多タイの1試合4打点をマークした。

勝利を呼ぶ男だ。勝利打点はチームトップの今季6本目だ。9本塁打、32打点にV打点を加えて「チーム3冠」。さらに本塁打を打てばこれで6連勝と、やはり4番が打てば勝利に近づく。日頃から浜中打撃コーチに「右打者は浜風を利用しろ!」とアドバイスを受ける。右の大砲が活躍すれば、昨季から苦戦が続く本拠地白星も増えていく。

矢野監督も1発で終わらない若き主砲に「すごく価値あるタイムリー。ああいうところで打ってくれるのは、本当の4番の打撃内容」と絶賛した。そして「開幕当初は迷ったりした時もあったけど、やっぱり悠輔の成長がチームの勝ちには絶対必要」とさらなる進化を期待する。

31日からは3ゲーム差で追いかける首位広島と激突する。大山と同学年のスラッガー鈴木との4番対決にも注目が集まる。お立ち台に立った大山は「この前は3タテされてるんでやり返せるように頑張ります」と宣言した。少年が詠んだ「春の大山」が注目を集めた虎の主砲だが、暖かくなり始めた初夏も爆発しそうな予感だ。【桝井聡】

▽阪神浜中打撃コーチ(4打点の大山に)「あそこは浜風で伸びる。ああいうのも入るんやなと思えれば、悠輔も楽に打てるようになる。これからの季節は結構、風が吹くからね。どっしりとした、4番としての形ができている」