巨人阿部慎之助捕手(40)が史上19人目となる通算400本塁打を達成した。4点を追う5回に代打で登場し、四球を選ぶと、6回から守備につき、同点の6回に中日田島から一時勝ち越しの今季1号。巨人の生え抜きでは王貞治、長嶋茂雄以来の大台到達を成し遂げた。

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新時代の元年に導かれるように、阿部は4年ぶりの捕手復帰を決断した。「老骨にむち打って頑張るよ」。体力の衰えは否めない。1月のグアム自主トレで「元」の1文字を胸に刻んだ。「捕手として元に戻る。体はきつくなってきたけど元気だけは忘れないように。今シーズンは新しい年号の元年だしな」。捕手を知り尽くしているからこそ不安が優先した。「どうすればチームに貢献できるか。そればっかりを毎日考えている。まだ見つからない」。挑戦なくして道はないということも熟知する。

令和元年。平成を生き抜いた大ベテランの平成元年は小学5年の野球少年だった。ゲームボーイが発売され「持っていたけど、ほとんどやっていない。野球のほうが楽しかった」。同年に国民栄誉賞を受賞した大横綱・千代の富士に「勝ったところしか見たことがない。横綱って負けないものだと思っていた」。勝者のメンタリティーは自然に培われた。美空ひばりの国民的大ヒット曲「川の流れのように」がリリースされ「ばあちゃんがいつも聞いていた」と大好きだった天国の祖母の顔が浮かぶ。同じ年、テレビ画面に映っていた巨人もリーグ優勝と大逆転での日本一を達成。「3連敗からの4連勝。すごかった」と先人の離れ業は脳裏に焼き付いている。

プロ19年目、40歳を迎えた。ここまで捕手として出場はなく、コンディションは思うように整わないのが現状。3月中旬には左ふくらはぎの張りで離脱した。「開幕は難しいかな…」。現実を直視すれば当然だった。誕生日の3月20日を過ぎたころ、原監督からのメッセージが届いた。「おまえさんがいないと寂しいよ。1軍に来い」。捕手としての完全復帰を目指せば数カ月は要する。代打の切り札として1軍に合流する決断を自ら下した。プロ通算2211試合目。400号のメモリアル弾を決めた阿部はベンチを飛び出し両手を広げて出迎えた原監督の胸に飛び込んだ。「(原監督も)僕と同じぐらいホッとしてると思います」と指揮官に感謝した。【為田聡史】