大商大が苦しみながらも初戦を突破した。同点の9回に代打曽根光貴外野手(3年=広陵)が決勝の内野安打。エース大西広樹投手(4年=大商大高)は本調子ではなかったが、1失点完投と底力を見せた。

富山陽一監督(54)はズバリ当たった采配を振り返った。9回1死三塁。工(たくみ)遼汰内野手(4年=広陵)が自らの判断でバントをして投飛に倒れていた。直後の2死三塁で代打に送ったのは曽根。決して出場経験が豊富ではない。

「うちは(チーム内で)競争をしているので。やっとメンバーに入った子。ここは、この子かなと。もう1つ言うと、その前に工が勝手なセーフティー(バント)をして…。曽根には広陵の先輩の失敗の尻ぬぐいをしてこい、と」と笑わせた。二塁に打った曽根は一塁ダイブでセーフをもぎ取り、決勝点が入った。

最終回は大西が3人で締めた。初回はめずらしく、緊張で硬かった。「投手戦になる。1点もやらない」と自らに誓っていたが、初回に1失点を喫した。

1年前の東京ドームで苦い経験をした。2回戦の徳山大戦の延長11回タイブレーク。現楽天の太田光捕手の二塁けん制が悪送球になり、まさかのサヨナラ敵失。日ごろから大西が「1球の怖さを知った」と胸に刻んでいるプレー。「ここでやるのは太田さんのあの1球以来。1球1球、慎重にいったので緊張しました」と明かした。

だが3回に1-1と追いつくと、エンジンがかかった。最速146キロ。最終9回にも143キロとコンスタントにスピードを出し、フォーク、カットボールでゴロを打たせた。日本文理打線は粘り強いというデータを元に、野手陣には「打たせてとるから」と告げていた。その通り、二遊間を中心に要所で引き締まったプレーが出た。

「投手戦を制して少しホッとしています。でもまだ怖い。もっと打者が振ってくれないと」と内容に納得はしていない。目標は日本一。注目右腕がまずは難所の初戦を乗り切った。