パ・リーグの歴史を彩ってきた左腕と右腕が、最高峰の投げ合いを演じた。ソフトバンク和田毅投手(38)が7回4安打無失点と隙のない快投を見せれば、楽天岸孝之投手(34)も2回以降毎回安打を浴びながら粘投。最後は岸の124球目をデスパイネがバックスクリーンに満塁弾をたたき込む劇的な幕切れ。エース同士の「ザ・投手戦」は2勝目の和田に軍配が上がった。

   ◇   ◇   ◇

敗戦の責任を一身に受け止めていた岸の表情がほんの一瞬、柔らかくなった。

「和田さんと投げ合えるのが、うれしいじゃないけど、楽しい気持ちもあった。何とかついていけたのかな」。

左腕の技巧に応えるように、今季最多124球にスタイルを凝縮させた。美しいフォーシームが、打者の膝元に糸を引く。度重なるピンチを、際どい攻めの連続で切り抜けたのとは裏腹に、打者31人でフルカウントは3人。走者を出してから、丁寧かつ大胆な投球は洗練された。

「8年目くらいまでツースリーピッチャーでしたから」。球数がかさむジレンマから新たな球種にトライした過去がある。「ツーシーム、フォーク…西武にいた時から投げようとしたけど、ダメだった」。今あるものを磨く。徹底したのは直球の制球を間違えないこと。「そこに投げる」。鋼の意志を込め、ミットに突き刺し続けた。「昔は狙ったところに10球連続なんて、投げられなかった。でも楽天に来て、ヨシさん(佐藤義則投手テクニカルコーチ)にも同じことを言われた。間違ってなかったと思えた」。地味な反復を怠らなかったから、今がある。

141キロが甘く入り、壮絶に散った。「最後は『1点くらいは』の気持ちで投げたけど、最悪の結果。自分の責任。あそこで粘れないようでは勝てない」。こだわり続ける制球がわずかに乱れた。【亀山泰宏】