東京ドームに「ムーンショット」が打ち上がった。「マイナビオールスターゲーム2019」第1戦で、全パの西武森友哉捕手(23)が、球宴令和1号を放った。「7番捕手」で先発マスクをかぶり、2回の第1打席に広島大瀬良の直球を超アッパースイング。打球に42度の角度をつけ、2階席へ先制2ランを運んだ。球宴通算3本目のアーチが決勝弾となり全パが勝利。2年連続MVPを獲得し、令和のお祭り男に名乗りを上げた。

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見上げた先に月はない。それでも西武森の視線の先で、東京ドームの屋根に届かんばかりの打球が、2階席へ着弾した。「まっすぐ1本! 1、2、3でいきました! 完璧な当たりでした」。その言葉通り、大瀬良の直球をとらえた1発だった。

初球からフルスイングで観客の度肝を抜く。2球目は3階席への大ファウル。1球ボールを見送り、アッパースイングから繰り出されたアーチの打球角度は42度だった。天に向かうかのごとく高々と舞い上がる角度。今季、メジャーでエンゼルス大谷が39度のアーチを描き、その急角度から名付けられた「ムーンショット」のさらに上をいく角度。令和新時代1号アーチを描き、決勝弾となった。

4年前に初出場した球宴でも、ここ東京ドームで怪打を打っていた。大阪桐蔭の先輩でもある阪神藤浪から打った球が、天井にぶち当たり一飛となった。漫画ドカベンの坂田三吉の「通天閣打法」を再現したような怪打で、どよめきを起こした当時、まだ19歳だった。「坂田ですよね? 似てましたか?」とあどけなく笑った森は、今季首位打者を争う。球界を代表する捕手としてパ・リーグの扇の要を担った。

捕手として初めてファン投票で選出されると公約したことがあった。「MVPをとれるように頑張ります」。昨季第1戦で初受賞すると、賞金300万円で源田ら同僚たちにごちそう。宣言通り2年連続のMVP受賞。平成と令和をまたにかけ、お祭り男が盛り上げた。【栗田成芳】