区切りの1発をサヨナラ弾で決めた! 西武中村剛也内野手(35)が史上20人目となる通算400号本塁打を達成した。同点で迎えた延長11回、オリックス増井から今季15号を左翼スタンドに豪快に運んだ。プロ18年目での到達で、西武の生え抜き選手では初めての快挙となった。

「中村剛也=ホームラン」の図式は、高校通算83本でプロ入りした18歳のときから変わらない。間近で見ていた証言者たちのエピソードが、その道のりを浮き彫りにする。

<証言者1・栗山巧>

その打球の軌道に度肝を抜かれた。同学年で01年ドラフト同期入団。同じ関西出身とあって高校時代練習試合で対戦した。その試合、中村の4三振を見て「なんや」と思っていたが、新人合同自主トレでフリー打撃に驚く。右打者の中村が左翼ポールを左側から外巻きで外野スタンドに入れた。栗山は「これはすごいなってビックリしました。バットとボールの接地時間が長いからそうなるんでしょうね。えらい柔らかく、スムーズにバットを入れるなって思ったのを覚えてます」。

<証言者2・渡辺久信GM>

監督就任した08年、規定打席に1度も到達していない中村を6番で起用し伝えた。「三振か本塁打でいいから」。実際にその年、46本塁打で初タイトル獲得。3倍以上の162三振も両リーグで最多。飛距離を生かすため、三振に目をつぶった。「たまにホームランでいい。そうじゃないとアイツの魅力がなくなる。4番だとそれではダメだけど、6番ならいい。悪いところを見だしたらきりがないからね」。翌年4番に。その後も本塁打と三振の数は比例する。

<証言者3・山川穂高>

中村が成熟期に入ったころ、おかわり2世と期待され入団。その後ろ姿を追いかける。「キャンプでフリー打撃とロングティー見たとき『こりゃかなわんな』って思いました」。見て学び、聞いて学んで4番を後継した山川だから証言に説得力が増す。「一番すごいのは素振りです。素振りがきれい。その素振りのようなスイングを打席の中でやる。なかなかできませんよ。あの太もも、ふくらはぎ、めちゃくちゃ太い。下半身ですね。タイプが同じように見えるけど、実は全然違うんです」。

<証言者4・中村剛也>

山川のいう「素振り」が中村の原点だった。大阪桐蔭時代から1人黙々と振り続けたエピソードを自ら明かす。「練習試合の前は室内練習場でフリー打撃をするんですよ。でも確認したいことがあったんで、外で1人で素振りをしてたら西谷監督がきて『バッティングやったんか?』って言われて本当はやってないけど『やりました』って。きっとばれてたんですけど『そうか』って。僕なりに考えて素振りをやっていたんで、見逃してくれたんじゃないですかね、きっと。確認はしていないですけど」。

今でも練習で素振りは欠かさない。素振りのようにアーチを描くこともあれば、素振りのように空振りもする。「僕は小さい時からホームランを打つ練習をしてます。ホームランを狙う=自分のスイングをすることなので」。数え切れぬほど振った素振りに、中村の打撃が凝縮されている。【取材・構成=栗田成芳】