4年目の阪神望月惇志投手(22)が6回3安打無失点の好投で、プロ初勝利を挙げた。150キロを越える持ち前の直球を武器にDeNA打線を抑え込んだ。チームは3連勝を飾り、3位DeNAとのゲーム差が「3・5」まで詰まってきた。このカード6年連続の勝ち越しも決定。CS争いが熱くなってきた。

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緊迫した場面で、望月が一瞬にやりと笑った。4回2死満塁でフルカウント。「もう開き直って、自分のボールを投げるしかないと思ったので、梅野さんの構えたミットだけ見て、全力で投げました」。懸命に腕を振った。153キロの直球。代打戸柱の打球は力ない左飛となった。

威力十分の直球で押し込んだ。初回は151キロ直球でロペスのバットを真っ二つ。2回も150キロ直球で嶺井のバットを折った。「前回のことを考えながら、余裕を持って真っすぐで押せたかなと思います」。4回に戸柱を打ち取る直前も、大和を153キロ直球で見逃し三振とした。3度目の先発でつかんだプロ4年目の初勝利だ。

ルーキーイヤーの16年にいきなり153キロを出し、鮮烈な甲子園デビュー。しかしその後は右肘痛や腰痛に苦しんだ。17年12月、腰部ヘルニアの手術に踏み切った。実戦復帰したのは18年3月30日。「けが、けがで本当に大変だったんで、周りにいて支えてくれた方々に本当に感謝してます」。お立ち台では感謝の言葉があふれ出た。

プロ入り前から藤川の「火の玉ストレート」にあこがれた。高校の自由研究で藤川のボールの回転について、400字の原稿用紙2枚にまとめたこともある。今年の沖縄春季キャンプ序盤。紅白戦で打ち込まれた望月は藤川に「どうしたらいいですか」と相談した。その後のブルペンで、捕手を約1メートル後ろに座らせて投球練習を行う望月の姿があった。自慢の直球を伸ばすため、望月の投球を映像で見ていた藤川がアドバイスした練習法だった。

昨秋キャンプでMVPに挙げた矢野監督は「先発も苦しいところで新しく出てきてくれるのは本当に大きい」。チームは3連勝し、DeNAに3・5差。夏の終わりに楽しみな若虎が台頭した。【磯綾乃】

▽阪神福原投手コーチ(先発望月がプロ初勝利)「力のあるボールがいっていた。中盤ぐらいから、いい意味で力が抜けて良くなった。次も勝てるように投げてほしい」

▽阪神金村投手コーチ(望月の投球に)「よく頑張った。変化球の制球もよかった」

<阪神望月アラカルト>

◆生年月日 1997年(平9)8月2日、横浜市生まれ。

◆経歴 5歳で野球を始め、芹が谷小では東芹が谷ジュニアフェニックス、芹が谷中では横浜南ボーイズに所属。横浜創学館では2年春からベンチ入り。15年ドラフト4位で阪神入団。

◆餅トレ 望月だけに“餅好き”。高校時代は1日約400グラムの餅を食べ体作り。入寮時には1キロ分のカット餅を持参した。

◆すぐにエース候補 入団直後の16年4月末、プロアマ交流戦に登板した望月を当時監督の金本知憲氏が視察。「すごいね。エース候補やね」とぞっこん。

◆大魔神フォーク 今春の沖縄キャンプで、矢野監督に連れられ佐々木主浩氏から伝授され「しっかりたたきつけるフォークを投げたい。いい感触はありました」と感謝していた