主将の仕事だ。巨人坂本勇人内野手(30)が、看板直撃の特大弾で勝利に導いた。1点を追う5回1死一塁、広島野村の初球シュートをはじき返し、左翼席後方の「キリン一番搾り」に当てる逆転33号2ランを放った。

27日の試合では、コンディション不良で8回守備から途中交代。元気にスタメン出場し、豪快なスイングで不安を一掃した。優勝マジックは19。5年ぶりの歓喜へ豪快にカウントダウンを打ち鳴らした。

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右手でバットを持ちながら、仲間に向かってキャプテンがほえた。1点を追う5回1死一塁。坂本勇が「今年一番、完璧」と表現した大きな大きな放物線が、「キリンビール」の看板を直撃した。昨年9月29日の広島戦以来の看板弾。お立ち台では「また打てて、うれしいです」と笑みがこぼれたが、普段は感情を胸に秘める男があふれる闘志を示し、チームを鼓舞した。

前夜はチームが敗れた悔しさと自らへの怒りを抱えながら、帰路についた。コンディション不良で8回の守備から途中交代。「大事を取って」の判断だった。翌日の出場の可否を「明日、動いてから」と言いながら、試合後すぐに「初動負荷トレーニング」に直行。汗をしっかりかき、体のコンディションを整えた。

試合前。周囲から不安の目が向けられる中で外野をランニングし、キャッチボール、ノック、フリー打撃とフルメニューを消化した。練習後、状態を聞かれ発したひと言に意地が詰まっていた。「何年も経験がありますから」。

11年前、プロ2年目で巨人の正遊撃手を獲得した。若いころは「今日は無理かもしれません」と言った時もある。その時、トレーナーから「今、猛獣が襲ってきたら、どうする?」とふいに聞かれ「すぐに逃げます」と答えた。「その気持ちがあるならいける」と鼓舞されグラウンドに立ち、662試合連続試合出場を記録した。

ガムシャラに試合に出続けた20代前半に心と体を鍛え上げ、30歳を迎えた今はシーズンを戦い抜くために自らの体と向き合い、休養も選択肢に加えた。原監督は「万全ではないんですけどね。本人ができるという状況だったので、よし行こうと。あの場面でグッドジョブというところ」と評価した。坂本勇は「大丈夫なんで。(賞品の)ビールを飲みすぎないように。コンディションを気にしながら頑張りたいです」と笑わせた。巨人の鉄人が、5年ぶりの歓喜へチームを動かす。【久保賢吾】