多くの遺産を残しレジェンドが去る。通算2000安打のロッテ福浦和也内野手兼2軍打撃コーチ(43)が現役を引退した。今季初の1軍は7番DHで先発し、4打数無安打もフル出場。DH解除で就いた一塁守備では美技を披露し、ロッテ一筋26年間の現役生活を締めくくった。チームは負ければCS進出が完全に消滅する可能性もあった一戦。福浦効果でチーム一丸となり、CS争いに踏みとどまった。

   ◇   ◇   ◇

一塁ミットを高く突き上げた。福浦は9回から一塁守備に就いた。2死一塁の15球目。一、二塁間を抜けそうなライナーをダイビングキャッチ。巧打者ながらゴールデングラブ賞3度の名手は、ウイニングボールを右手に収めた。「最高の野球人生だった。最後は体が勝手に反応した。もう少し打てると思ったが甘くなかった。これが今の実力かな」。4打数無安打。それでも試合後9度、宙に舞った男に悔いはなかった。

ZOZOマリンや2軍のロッテ浦和球場では、練習で意図的にポップフライを上げる選手が目立つ。福浦の教えだ。02年から取り入れ、いまだ続けるルーティン。「ずっと前だね。まだ高畠さんが生きている時だから」。そう振り返ったのは高畠導宏氏(享年60)。ソフトバンク小久保やオリックス田口らを育てた名コーチ。初めて打率3割を達成した翌年の02年にロッテで打撃コーチを務めた。「しっかり見るのが1つだし、下半身を使わないと上がらない。(打撃の)修正方法で一番足を使いたい時はそれをするね」。同氏はロッテを1年で退任。04年に膵臓(すいぞう)がんで亡くなった後も、教えを守り続けた。

初回に先制打を放った鈴木も、この練習の継承者。今年の石垣島キャンプ。調整期間として2軍で福浦と長く練習する時間があり取り入れた。今でも試合後の室内練習場で繰り返す。鈴木は「今日はやっぱり福浦さんのためにという思いもあった。すごい風が吹いていたが、あまり感じることなくできたのは、そういう思いがあったからだと思う」。最大風速18メートルの風にも全員が集中力を切らさず、3位に0・5差と迫った。

26年の現役生活を終えた福浦は「自分がかなえられなかったことは、リーグ優勝と井口監督の胴上げ。後は若い選手に任せたい」。築いた財産は、後輩たちに受け継がれた。こうしてロッテの歴史は続いていく。【久永壮真】

○…チームメートの粋な計らいが目立った。あらかじめ決まっていた監督、コーチ、選手が「背番号9」を背負うだけでなく、野手はみな福浦と同じオールドスタイル。普段はロングパンツスタイルの清田、井上、マーティンらも「福浦流」で臨んだ。自主トレをともにする田村は登場曲をSMAPの「ありがとう」に変更し感謝を伝えた。