巨人が、史上初めてポスティングシステムを利用しての大リーグ移籍を容認した。今季最多勝、勝率1位、最多奪三振の投手3冠に輝いた山口俊投手(32)が18日、都内で原辰徳監督(61)今村司社長(59)とともに会見を行い、同システムで大リーグ移籍を目指すことを表明した。今村社長は容認への経緯として、FAで加入した16年の交渉時に、将来的に同システムによる大リーグ移籍を認める条項があったことを明かした。

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通常は表面化することがまれな、FA交渉時の契約が球団初のポスティングシステム容認の背景にあった。会見の冒頭、今村社長が経緯を説明。「2016年に山口投手とFA交渉する中、メジャーリーグ挑戦をしてみたい、その目標の下で一生懸命頑張りたいという強い思いを伝えられ、FA移籍にあたって時期を確定しない形でポスティングができる権利を認めていました」と、特別条項を加えていたことを明かした。

山口がDeNAに在籍していた16年は、巨人と中日の争奪戦に発展。交渉過程で、数年後の大リーグ挑戦を認めていた。同社長は「今シーズン終了後、あらためて山口選手に思いを確認したところ、挑戦したいという強い思いを伝えられました。球団としては当然慰留に努めましたが、山口選手の夢を実現させよう、応援しようという結論に至りました」と説明した。

16年当時は今村社長、原監督ともに球団に在籍していない。指揮官は「シーズン途中に、契約上こういうものがあるということを私も知りました」と夏ごろから山口との話し合いを継続。「来季の戦力として当然欠かせない。しかし話を聞くと、夢、挑戦、この2文字だけ。監督としても立ち入ることができない場所」と思いを尊重。当面背番号11を空き番号にして復帰を待つ考えを示した。

巨人では松井秀喜氏、上原浩治氏、高橋尚成氏が海外FA権を行使して大リーグに移籍したが、同システムでは初。現在は菅野が将来的に大リーグ挑戦する夢を公言している。今村社長は今後も容認する可能性について「丁寧に個々に対応しながら真摯(しんし)な対応をするしかない。選手たちは希望、夢を持つことは大事」と言及。山口と交わした3年前の契約については「当事者は当事者で、その時の最大の、最善の選択をしたと思っています。それを受け継いで、その契約を履行しているというのが現状。今後は個々に選手、そして世の中の趨勢(すうせい)を見ながら決めていくことになると思います」と見解を示した。【前田祐輔】

▽巨人元木ヘッドコーチ(山口のメジャー挑戦に)「応援するだけだよね。チームとしては、新たな山口俊が現れてくれればね」

▽巨人戸郷(オフは山口と自主トレ予定。ポスト山口の期待に)「いろんなことを学んで、1歩でも近づけるように頑張りたいです」