感謝の気持ちを、マウンドで表現する。左膝の大ケガからの復帰を目指す日本ハム上沢直之投手(25)が29日、札幌市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、1000万円減の年俸6000万円プラス出来高払いでサインした。開幕投手を務めながら、6月に左膝を骨折して戦線離脱。来季交流戦明けまでの復活を目指し、今季11試合の先発で5勝3敗に終わった悔しさを晴らす。

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上沢の目は、真剣だった。「復活した時に、お世話になっている人たちに感謝を伝えたい」。ショッキングな事故から約5カ月。減俸の現実を受け止めて、復活の瞬間を見据えた。

自身初の開幕投手を務めた19年。あの事故さえなければ、今季最多勝の有原と2本柱を形成していたはずだ。「1000万円ダウンなんですけど、来年、取り返せるように、インセンティブはしっかりつけてもらった」。球団側の配慮に、感謝があふれた。

「6・18」を胸に刻む。6月18日DeNA戦(横浜)で打球が直撃し、左膝蓋(しつがい)骨が真っ二つに割れた。今季絶望の大ケガから、必死のリハビリが始まった。昨年、自身初の2桁勝利を挙げ、一流への階段を駆け上がっていた最中の不幸。「大きな試練」だが、下は向かない。「栗山監督に『来年待っている』と言われた。そう言われた以上、僕も男なので、なんとかその思いに応えたい」と意気込む。

12月上旬にランニング再開のメドが立った。左足の筋肉や体力を取り戻し、来年2月のキャンプインまでに、通常の距離でキャッチボールを行えるレベルを目指す。「遅くても来年の6月18日までには復活したい」と決意は固い。

今月20日に第1子となる長女が誕生したばかり。事故当日、球場で応援する愛妻のおなかにいたわが子が、辛いリハビリに耐える力をくれた。

上沢 僕がこのままつぶれていったら、トレーナーや球団の人の恩を無駄にしてしまう。その人たちに復活した時に「ありがとうございました」と伝えるために頑張っている。

来季の目標は、2年ぶりの2桁勝利。マウンドで再び輝く日を、多くの人が待っている。【中島宙恵】(金額は推定)