「現役ドラフト」の概要が見えてきた。労働組合・日本プロ野球選手会は5日、大阪市内で定期大会を開き、出場機会の少ない選手を対象とした「現役ドラフト(仮称・ブレークスルードラフト)」の20年シーズンからの導入を日本野球機構(NPB)に強く要望することを決議した。同ドラフト案に対する両者の協議は続いているが、各球団が対象となる8人を選定し、全12球団から最低1人以上が指名されるプランが明らかになった。来季導入へタイムリミットとなる来年1月までの大筋合意を目指す。

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選手の未来を変える新ルールの20年からの実施を選手会の総意で切望した。「ブレークスルードラフト」と仮称された現役ドラフトの来季導入をNPBに強く要望すると決議。シーズン中も交渉を続けている炭谷選手会会長は「20年から実施したい、早く実行してほしいという気持ちは選手全員で一致している」と意向をあらためて表明した。

昨夏から出場機会の少ない選手を救済するため、現役ドラフトの導入をNPBと協議してきた。当初は入団年数ごとに1軍登録日数の下限を設け、登録日数に満たない選手をすべて対象にするビジョンを描いていた。だが現状、12球団が意見を出し合い、まだ総意は得られていないが、骨子となっている案は球団側が対象選手を選定するやり方だ。炭谷会長は「最初、求めていたよりは、ずれるかもしれない」と理想を求めつつ、現実を受け入れる姿勢を見せている。

両者の交渉は継続中だが、素案に対する大きな反対はないという。具体的になってきたのは対象となる選手の人数や、同ドラフトの方式だ。球団が8人を選定し、リストを作成。前年10月のドラフト会議で指名された新人や外国人、一定の高額年俸選手らは自動的に対象外となる見込みだ。また全12球団から最低1人以上が指名される方式とみられる。例えばA球団がB球団から対象選手を指名すると、次の球団はB球団以外から指名する。1巡するまで繰り返し、全12球団が埋もれていた選手を選ぶことになる。

一方で来季導入へはタイムリミットも迫る。現在は7月31日で移籍期限が終了する野球協約を変える必要がある。見切り発車での導入に慎重論もあるNPBは、次回の選手会との事務折衝となる来年1月22日をメドとしたい方針。選手会の森忠仁事務局長は「協約に例外的にこういうの(現役ドラフト)をやると先に入れてもらい、内容(の話し合い)は継続してもらえば、1月いっぱいでなくてもできるのでは」と大筋合意からの“延長戦”の交渉も視野に入れている。

実現すれば、五輪を終えた後の8月中に実施する可能性もある。炭谷会長は「完成形が理想だが、やってみて微調整していけばいい」と新しい未来を見据えた。

<参加選手のコメント>

▽日本ハム中島選手会長「来年からできるように話し合いました。早くやった方がいい。僕らは1年1年が勝負。2020年からやりたいというのが、選手会の意見です。ルールはまだ決まっていない感じなので、急がないといけない」

▽日本ハム近藤「選手は、早く実現したいと、みんな言っていた。できれば来年にも。移籍が活性化すれば、出場機会も増えるので、いい制度だと思う」

▽楽天則本昂「いろんな意見を交換できた。いい時間になったと思います」

▽楽天鈴木「1年でも早く実現できるようにしたい。選手の人生も変わってくるので」

▽ロッテ益田「何とかいい方向に持っていければいいと思う。なるべく早く。選手は1年1年が勝負なので来年から実施できるようにやっていきたい」

▽巨人菅野「みんな1年でも早く実現してほしいという思いだと思います。(議論は)だいぶ煮詰まっている」

▽阪神藤浪「それによって(選手の)人生が変わってくる。選手会としては早くやりたい」

▽ヤクルト中村選手会長「早く開催して、移籍市場が活性化するようにという意見は、12球団で一致した。選手は1年1年が勝負。みんなで同じ方向を向いてやっていく」

<これまでの経緯>

◆18年7月 選手会が臨時大会を開き「日本プロ野球構造改革案2018」について論議。改革の1つに「魅力あるプロ野球の制度の構築」を掲げ、現役ドラフトを提唱する意向を示す。

◆8月 NPBとの事務折衝で、現役ドラフトを最優先に協議したいと伝える。NPB側も話し合いを続けることに同意。

◆19年3月 野球界への提言として「選手会ビジョン2019」を発表し、現役ドラフト実施を最優先課題とした。

◆6月 事務折衝で議論。同年オフの導入は難しい状況としたが、選手関係委員会の谷本修委員長は「12球団が合意するのは大変だが、できたら形を作っていきたいというのはある」。

◆7月 NPBが具体案を提示。対象選手や行うタイミング(シーズン中かオフか)などで選手会案との相違があり、今後も折衝を重ねていくとした。

◆11月 20年からの導入を改めて要望。対象選手の選定については協議中としたが、開催時期については柔軟な姿勢を示す。