こだわりは譲れない。ロッテから金銭トレードで楽天に加入した涌井秀章投手(33)が23日、楽天生命パーク宮城で入団会見に臨んだ。背番号は16。7500万円減の年俸1億2500万円プラス出来高で1年契約を結んだ。最多勝に3度輝いた沢村賞右腕も来季でプロ16年目。3球団目でたどりついた東北の地で、先発投手への強い思いを示した。(金額は推定)

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涌井が袖を通した真新しいユニホームの胸元を、両手でつまみながら眺めた。「この角度からしか見えないので…。イメージがわかないです」。西武、ロッテ、そして楽天。とりどりのカラーに調和しつつ133勝を積み上げた。「やることは投げることだけ。もう戸惑いとかはない」と、さらりと言った。

プライドがにじんだ。「先発とは」との問いに「野球の中で言ったら一番大事なポジション。ピッチャーから野球は始まる。そこを目指してみんな野球を始める。チームの中心ですね」と表現した。小学時代はソフトボール、中学から野球を始めて来年で34歳。まっさらなマウンドを守ることがやりがいだ。

だからこそ「もちろん希望は先発」とこだわる。ただ「ポジションを勝ち取らないといけない」とあぐらをかくつもりはない。ロッテでの6年間で145試合に登板。救援は今季最終登板、9月24日西武戦だけだった。「自信は失ってはいけないもの。シーズンが始まる前は常にキャリアハイを狙っている」。プロである限り、与えられた場で最善を尽くす。

慣れない東北での生活。モデルで妻の押切もえからは「やるからには頑張ってね」と背中を押された。「来たからには優勝したい。早くこの球場で楽天のユニホームを着てやりたい」。表情は終始あまり変わらない。秘めた自らへの期待感とともに新天地への扉を開けた。【桑原幹久】

▽楽天石井GM(新加入の涌井に)「シーズンを通したリスクヘッジはできた。彼の練習の態度、仕方はイーグルスの選手にとって見る価値のあるもの」