阪神ドラフト5位の中京学院大中京・藤田健斗捕手(18)が滋賀・彦根市の荒神山公園野球場で自主トレを公開した。球場の近くには、陸上男子100メートルで日本人初の9秒台を出した桐生祥秀(24=日本生命)が中学時代にトレーニングを行った“桐生坂”があり、この日は藤田も汗を流した。「足の速い選手を刺してこそプロの世界で生きていける」。桐生坂で足腰を鍛えた藤田バズーカが将来、桐生級の快足選手を刺して名を挙げる。

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琵琶湖から吹く寒風とみぞれが降る中、藤田は“桐生坂”へ向かった。彦根市出身で、陸上男子100メートルで日本人初の9秒台を出した桐生が中学時代にトレーニングを行った場所だ。「名前は知らなかったけど小学校の頃から来ていた。坂で鬼ごっことかをしていた」。自主トレを公開した荒神山公園野球場の近くにあり、幼い頃から慣れ親しんだ桐生坂。この日ランニングで汗を流し、プロでの決意新たにした。

セ・リーグにはヤクルト山田哲や中日大島、広島鈴木など、桐生級の俊足が数多くそろう。「そういう足の速い選手を刺してこそプロの世界で生きていける。負けたくない」。陸上のスピードスターを生んだ坂道で、球界のスピードスター刺しを誓った。

盗塁阻止率に強いこだわりがある。「やるからには1番を目指してやっていきたい。(試合中は)常に走ってくると思って準備を大事にしている」。1・90~1・95秒で速いと言われる二塁送球は、1・8秒を誇る。藤田バズーカ発動で将来、阻止率1位の捕手になることが目標だ。

目指す捕手像はソフトバンク甲斐だ。「甲斐キャノン」と呼ばれ、18年の日本シリーズで日本記録の6連続盗塁阻止を樹立した球界屈指の強肩。「正確性もあって肩が強い」。動画で甲斐の送球を見ては、体の使い方を研究。昨年4月のU18日本代表候補合宿では、大船渡・佐々木が投じた高校生最速の“163キロを受けた男”として有名になったが、プロでは強肩で名を売る意気込みだ。

出身の滋賀ユナイテッドジェイボーイズからは、初のプロ野球選手誕生となった。後輩たちにも夢を届け続けたい。「プロで戦えるだけの体力づくりや体作りというものをやってから、技術を追い求めていく」。大みそかや元日も自主トレを行い、体作りにも余念はない。桐生坂から桐生に負けないビッグな選手に駆け上がる。【只松憲】

◆球界の主な強肩捕手 近年ではソフトバンク甲斐拓也が二塁送球で最速1・71秒。18年日本シリーズで広島相手に6盗塁刺を記録。MVPを獲得し、「甲斐キャノン」の異名が定着した。阪神では梅野隆太郎が昨春キャンプの測定で1・85秒を計測。ヤクルト古田敦也は93年、プロ野球最高の盗塁阻止率6割4分4厘をマークした。

◆藤田健斗(ふじた・けんと)2001年(平13)10月18日生まれ、滋賀・長浜市出身。小2で野球を始め、滋賀ユナイテッドジェイボーイズで捕手。中京学院大中京(岐阜)では1年春からベンチ入りし、同秋から背番号2で4番を担った。高校通算24本塁打で二塁送球1秒8の強肩。そろばん1級。173センチ、73キロ。右投げ右打ち。

◆桐生祥秀(きりゅう・よしひで)1995年(平7)12月15日生まれ、滋賀県出身。京都・洛南3年の13年4月に、100メートル日本歴代2位となる10秒01を記録。14年日本選手権初優勝。17年9月に日本人初の9秒台となる9秒98をマーク。400メートルリレーはともに第3走者で、16年リオ五輪銀、17年世界選手権銅に貢献した。176センチ、70キロ。今年1月1日に一般女性との結婚を発表し、二人三脚で東京五輪金メダルを目指す。