球界の「今」にフォーカスする新企画「深掘り。」は、序盤戦を終えた2020年キャンプを取り上げる。練習メニューににじみ出るチームの色と今昔…令和になって初めてのキャンプを多角的に掘り下げる。
巨人
開幕が早まる東京五輪イヤーモードで、キャンプ初日から投手陣は打撃投手を務めた。例年はブルペンだけだが、実戦形式で1日に戸郷、高田、2日は高橋、畠ら5人が登板。紅白戦は4日の初戦から3試合を消化。ティー打撃ではソフトボールやゴルフボールサイズなど大きさが違うボールを打ち込み、長尺の棒もスイングに取り入れている。
DeNA
「ブラストモーション」など科学的な測定機器も目を引くが、3日に「重盗防止」をメニューに明記した。走者一、三塁から重盗を仕掛けられたと想定し、捕手の送球を投手がカットするもの。三嶋らが軽快なフィールディングを披露。定番だが「後回し」になりがちな内容を第1クールから明記するところに、走塁守備に対する意識の高さが見える。
阪神
今キャンプで初めて実施されている「ワンデーキャプテン」。毎日指名された野手、投手1人ずつが黒枠で囲まれている。井上打撃コーチが提案し、1日主将は目立つようビジターユニホームやサードユニホームを着用。横山が「C」と書いたテープを帽子に貼ったり、藤浪はおでこにテーピングで「CAPTAIN」と書いたりして盛り上げている。
広島
「一体感」を掲げる佐々岡新体制のもと、宮崎・日南キャンプの第1クール序盤の練習メニュー冒頭に「ベースランニング」が組み込まれた。ウオーミングアップの後に投手、野手全員が一緒に行うもの。近年にない取り組みを提案した佐々岡監督は「みんなでということ。一緒にということ」と結束を強調した。質量ともに十分の伝統は相変わらず。
中日
午後メニューには必ずランニングが含まれる。昨季終了後に与田監督が「体操=体を操る」をテーマに掲げ、秋季キャンプで陸上競技のトレーナーを招いて腕の振り方、足の出し方について指導を受けた。今春はそのテーマを「心体操=心と体を操る」へと進化。9年ぶりVへ、竜戦士は沖縄・北谷公園陸上競技場で連日「陸上部員」と化している。
ヤクルト
燕打線は、さらに長打力アップを狙っている。ロングティーは打撃練習の8カ所ローテーションに組み込まれているが、メニュー終了後に再び2人1組で行う。柵越えを徹底させ、杉村打撃コーチは「遠くに飛ばす意識を、より強くしてほしい」と説明。高津監督のもと、キャプテン青木、投手キャプテン五十嵐が風通しのよい組織作りを目指す。
西武
山賊打線の秘密は練習にあり。キャンプ3日目の朝、室内練習場に昨季首位打者でMVPの森がいた。早出で打ち、午後は個別でも打ちまくる。山川も早出、居残りは当たり前。打つ量も時間もとにかく多いのが、西武のキャンプだ。その礎は、栗山や今回はB班(2軍)調整の中村らが引き継ぎ、受け継いできた。山賊は現状に甘んじることはない。
ソフトバンク
3年連続日本一の王者らしく「王道キャンプ」だ。特別目を引くメニューは少なく、守備、打撃練習にしっかり時間を割く。全体メニューは14時前後に終了することが多く、そこから個別メニューに入る。若手だけでなく、ベテランの松田宣らも特打や特守に名を連ねることが珍しくない。第1クールから強いボールを投げ込むブルペンは圧巻。
楽天
1点を奪い、守り切る“三木流”浸透へ実戦練習に時間を割いた。午前中からゲームノック、走塁練習を実施。ケース打撃では三木監督が拡声器を使って打者へ作戦を伝え、成功するまで何度もやり直しを命じた。極め付きは「特走」。指揮官自ら講師となり座学を行い、手本も見せた。スイング量の足りない選手は早出、居残り練習で補っていた。
ロッテ
1日から技術練習を活発に行った。今年からキャンプ地・石垣島での「先乗り自主トレ」を実施。22選手が5日間、亜熱帯の気候に慣れてからキャンプインしたことで、初日からの動きにつながった。井口監督の「やらされる練習では伸びない」との考えから、午後はほとんどが個別練習に充てられ、課題解決に励む。宿舎に戻る時間も別々だ。
日本ハム
若手野手陣は、初日から日が落ちるまでバットを振り込んだ。午後からはフリー打撃→個人練習(指名選手のみ特打)→打撃強化(長尺重量バットでのロングティーもしくはティー打撃)と打撃ざんまい。昨秋から指導する小笠原ヘッド兼打撃コーチが主導して、振って基礎体力を強化。自主練習時間が多かった近年と比べて大きく変化した。