北東北大学野球リーグの富士大(岩手)が、強固な投手陣構築に手応えを得ている。すでに強豪社会人に内々定している4年生5人衆を中心に、伸び盛りの下級生も信頼度抜群だ。18年秋にリーグ史上初の10連覇達成後、昨年は春、秋ともにV逸。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今春のリーグ戦は今月30日開幕に延期中。巻き返しに向けて、豊田圭史監督(36)は140キロ超9投手リレーの秘策も視野に入れた。

   ◇   ◇   ◇

183センチの長身左腕・登藤光(4年=九里学園)は、独特な2段モーションの投球フォームで真上から投げ降ろす。ボールにも緩急をつけ、打者のタイミングをずらしてアウトを重ねる。「ピンチでも表情に出ないのが自分の良さ。最上級生なので勝ちにつなげる投手になりたい」。昨年は、入学後に味わったことのない悔しい結果に危機感もある。他の4年生投手とともに、ラストイヤーで意地を見せる覚悟だ。

1年秋に左肩を手術し、昨秋のようやくリーグ戦デビューした。9月8日のノースアジア大戦で初登板先発し、4回2/33安打無失点。勝ち星はつかなかったが、存在感を示して勝利に貢献した。「この冬は完投出来る投手になるために走り込んだり投げ込んだりしてきた。ランメニューはタイム設定を明確に常に全力で取り組めた」。体力増強は球のキレにもつながった。

散歩が趣味。知人になった学校近くの高齢者宅で飼われている柴犬ランを連れて気分転換することも多い。現在は練習制限や練習試合自粛中のため、とくに大切な時間でもある。実戦不足ではあるが、今春の神奈川キャンプ中には社会人や大学相手に好投。「こいつが投げれば大丈夫とチームから信頼させることが大事」。フル回転の準備は整っている。

豊田圭史監督(36)も4年生の奮起に期待する。タイプの異なる投手陣に層の厚みも増してきた。昨年に経験を積んだ下級生を含め「4年生が切磋琢磨(せっさたくま)して成長してくれているし、誰を使っても計算が立つようになってきた。1試合を9人で1イニングずつ投げさせることも考えています」。9人総動員リレーが富士大の武器となるかもしれない。【鎌田直秀】

○…右腕・川原直貴(4年=大曲)は直球のキレと制球に磨きをかけた。昨春にリーグ11連覇を逃した責任を背負っている。今冬は投球フォームを見直すだけでなく、体重増でパワーもアップ。昨秋の76キロから一時は85キロ。現在は83キロに絞り「自分はストレートにこだわって練習してきた。真っすぐで勝負出来るようになってきた」。最速も147キロまで伸ばし、スライダーやシュート、チェンジアップなどの変化球も有効になった。

大学のゼミでは精神面のマネジメントを勉強してきた。先生の話や専門化も本なども読み、人間の精神状態を、諦め、怒り、不安、挑戦の4つに分類。「怒りでは熱くなりすぎてしまう。ちょっと不安に思っていたほうが冷静に判断が出来る」。マウンド上で熱くなり、勝負を急いで痛打された反省を生かす。

○…左腕・宇賀神陸玖(4年=作新学院)はエースの自覚たっぷりだ。昨春は防御率0・61と活躍し、優秀選手賞と最優秀防御率を獲得。だが、秋は青森大や八戸学院大戦の大一番で勝利を逸した悔しさだけが残った。「リーグ開幕が延びたぶんだけ、もっと練習出来るというポジティブな気持ち。4年生はみんなで競い合えているし、頼もしい後輩もいる。自分も姿勢と結果で引っ張りたい」と闘志を燃やす。

○…左腕・布施宏基(4年=日大藤沢)は最速148キロの直球を中心に奪三振率の高さを誇る。「常時140キロ台後半を出して、まっすぐで差し込ませてファウルを取りたい」。カーブやチェンジアップなどの変化球も決め球にする。好不調の波が大きかったが、今冬はブルペンでの投げ込みを重視して改善。今春は日本製鉄かずさマジック(千葉)との練習試合で先発し、7回2失点の好投を見せるなど自信も深めている。

○…左腕・渡辺法聖(4年=東北)は高校時代に「招き猫投法」と称されたテークバックの小さい変則投球フォームで打者を斬る。横手からの力ある直球と変化球は左打者の背中からボールが来るくらいの感覚。「自分の打者から見づらいフォームで、特に左打者が多い時にワンポイントでもいいから絶対に抑えたい」。先発、中継ぎ、抑え、どこでもフル回転するつもりだ。

▽フォーム修正で成長著しい右腕・石井涼(3年=三浦学苑)「春のシーズン開幕までに球速は149キロまで上げたい。体重も9キロ増えたのでキレは増しています」

▽昨秋は全10戦中8試合に登板の右腕・宮下竜一(3年=武相)「力みなく投げられるように緊張感も楽しみます。まっすぐで追い込んで変化球で三振が取りたい」

▽1年春から登板してきた・金村尚真(2年=岡山学芸館)「今冬はシャドーやウエートなど全体練習以上に1人での練習を大切にしてきた。調子が普通であることが大事。波をなくして自分とチームの結果につなげたい」

▽昨秋の開幕投手を任された期待の左腕・原田翔太(2年=平塚学園)「今は左肩痛から復帰途中なのでリーグ延期は個人的には有り難い。持ち味の投げっぷりの良さは忘れずに質を上げていきたい」