巨人原辰徳監督(61)が“第3次チルドレン”と融合して、メモリアルイヤーに歩みを進める。新型コロナウイルスの影響で、120試合で覇権を争う特別なシーズン。あと1勝に迫るプロ野球史上初の通算6000勝に加え、現在1024勝の監督通算勝利数は、10勝で長嶋茂雄氏(1034勝)に並び、43勝で球団歴代1位の川上哲治氏(1066勝)を超える。6月19日から始まる巨人史上最多勝利監督へのカウントダウンを、チーム一丸となって進めていく。

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2試合連続の2ケタ安打となる13安打で打ち勝ち、原監督は一塁側カメラマン席の前に設置されたスタンドマイクの前に立った。

坂本の代役として出場した20歳の3年目湯浅、右足親指痛から復帰3試合目の丸、復活を期すベテラン中島から飛び出した価値ある3本塁打。テレビカメラともソーシャルディスタンスを保ちながら「それぞれがいいものを出してますね。もう少し時間はありますけど、コンディションを落とすことなく今日までしっかり迎えてくれていると思います」。順調な調整にチームの成長を感じている。

誰も経験したことがない120試合制のシーズンは、原監督自身のメモリアルイヤーと重なった。ヘッドコーチだった01年秋。東京ドームの監督室に呼ばれると、直立不動で待ち構えていた長嶋監督から右手を差し出された。「おめでとう。来年から原監督だ」。2人だけの空間で託された巨人監督の座は、今季で通算14年目を数える。

13年間で積み上げた監督勝利数は1024勝。恩師の長嶋氏まであと10勝。巨人歴代1位まで42勝に迫っている。

02年から2年間の第1次政権を支えた選手は、すでに現役にいない。黄金期を迎えた06年から10年間の第2次政権の主力は、阿部2軍監督を筆頭に2軍首脳陣として集結した。経験豊富な指導者から1軍に推薦された湯浅が3安打と結果を出し、昨季加入した丸、中島も続いた。前回政権時を知る菅野、岡本、亀井らに加え“第3次チルドレン”が開幕に向けて技術を研ぎ澄ませている。

19日の開幕まで残り7試合。原監督は「目標を定めて戦える。喜びを感じながら1戦1戦戦っていきたい」と言った。本来1番は左打者の吉川尚だが、左投手対策で1番増田大、2番湯浅と右打者を並べる打順をテスト。捕手は大城、小林、炭谷と三つどもえの競争を促し「打率がすごい。しかしキャッチャーは1人しか出せない。ライバルとしての炎もあるんでしょう」と刺激を生んでいる。今も昔も変わらない実力至上主義を掲げ、苦楽をともにしてきた面々とスクラムを組んで。1つ1つ勝利を積み上げていく。【前田祐輔】