日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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開幕を迎えるプロ野球だが、球団経営の行方は深刻といえる。試合数削減、当面は無観客試合が続き、各球団とも収入の激減は避けられない。

5月12日の臨時オーナー会議後、南場智子議長(DeNAオーナー)は「プロ野球はかつてない危機的ともいえる状況です。球団経営にとって非常に大きな問題。減収のインパクトは大きい」と説明した。そして、選手の年俸削減に関する問いには「その件に特化せず、アイデアを出していこうという方向性で終わった」と俎上(そじょう)に載せたことも示唆していた。

日本野球機構の選手関係委員会は、選手の年俸削減に踏み込まない方向性を示したという。6月15日の選手会総会後の炭谷銀仁朗会長(巨人)は「各球団ごとにカットしないと説明された球団もある」と話した。選手会の森忠仁事務局長は「今シーズンは保証されたというだけで、来年以降は分からないという不安は残っている」と補足説明した。

選手が交わす「統一契約書」には、感染、天災など、不測の事態を想定した減額制限の明記がないことから、経営者サイドは減額の行使をしなかったとみられる。

だが実際は、12球団の参稼報酬における意見が一本化しているかは、甚だ疑問だ。すでに楽天三木谷オーナーが異論を唱えているようだ。球団ごとに経営を持続する指針が異なるのは常識的といえる。

親会社の資金繰りさえ厳しい社会情勢に、依然、都内でも感染者が増加し、来シーズン以降も見通しが立ちにくい。ここを乗り切っても、来季以降の保証はないのが実情だからだ。

今後は、不可抗力的な有事に対処した参稼報酬の規定を策定すべきという提案も行われるだろう。「野球協約」「統一契約書」の改訂が一つの焦点になってくる。

次回開催のオーナー会議では、それぞれが野球界のビジョンを語ってほしい。ファンが待ちに待ったプロ野球だが、舞台裏からは不穏な空気も伝わってくる。なにが起きるかわからない、緊張の“夜明け前”だ。