負ける無念さも、開幕できたから味わえる。2020年6月19日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、プロ野球が約3カ月遅れで開幕。誰もが待ちわびた一戦で、日本ハムは西武に0封負けで2年ぶりの黒星発進となった。栗山英樹監督(59)は野球に一喜一憂できる日常への感謝とともに、チーム一丸となって常に前を向いて特別なシーズンを戦う決意を新たにした。

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勝ち負けを超えて、感じることがあった。栗山監督は試合後、笑みを浮かべながら言った。「こうやって悔しい思いをさせてもらうのも感謝しながら。悔しかったりすればするほど、明日から元気に前へ進むだけ」。待ち望んだ開幕戦は飾れなかったが、各打者の粘りや3回には西川の好守も飛び出した。懸命に勝利を求めてプレーする選手の姿が、グラウンドにあった。

試合前、指揮官が訓示した内容を選手が体現してくれていた。

栗山監督 野球がある意味が今、問われている。世の中に、何か意味があって野球ってものがこうやって発展してきたと考えれば、そういう責任を、みんなにあえて背負ってもらって、やるしかない。これはウチのチームだけではなく、全ての野球人、プロ野球選手がそう思ってやるしかないシーズンだと思う。

この日の選手の必死な姿を見て、メッセージが伝わっていることは確信した。開幕三塁スタメンで大抜てきした高卒2年目の野村佑希も、その1人。「最初(初回)にああやって(打球が)飛んでいって(4回1死満塁の場面で)判断が難しい打球も飛んだりする。全て大きな財産になる。一生忘れないでほしい。緊張もしただろうけど、若者らしく堂々とプレーしたことはすごく意味がある」。代打で初めて開幕戦に出場した清宮とともに、将来のチームを背負う逸材に目を細めた。

エース有原が4回だけ、運にも見放された打球も絡んで3失点。打線は気合が空回り。投打がかみ合わなかったが、指揮官は自らを責めた。「淡泊に見えるんだけど(選手が)何とかしようと思っているのが形にならないっていう典型的な試合。まあ、監督が悪いんだろうな」。こんな感情も、野球をやっているから感じられる。「野球に敬意を持って、感謝して、しっかり頑張ってるねと言ってもらうように頑張っていきます」。20日こそ、今季のチーム初白星を飾って、選手をたたえる。【木下大輔】