エースが有言実行の快投だ。2年ぶり6度目の開幕投手を務めた楽天則本昂大投手(29)が、オリックス打線を7回1安打1失点に封じ、今季初勝利。試合前からの宣言通り、三木監督へウイニングボールを手渡しした。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、約3カ月遅れで始まったプロ野球。無観客試合という特殊な状況下でも頼れる男がきっちり仕事を果たした。

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勝利に沸くベンチ内で、則本昂は三木監督の背後から声をかけた。振り向いた指揮官へ、右手に握りしめたウイニングボールをそっと手渡した。「3カ月遅れましたけど、初勝利届けられて良かった。『今日ウイニングボール渡します』と言っていたので、渡せて良かったです」。宣言通り、新生楽天の初陣を飾った。

文字通りの「投手戦」を制した。オリックス先発は山岡。チームは昨季7戦1勝6敗と苦しんだ。「早い段階から投手戦になると思っていた」と立ち上がりから慎重を期した。1番にT-岡田を配す長距離砲ぞろいの猛牛打線。1、2回を完璧に締めた。1点リードの3回にバント処理のミスから犠飛で1点を失うも、4回以降はパーフェクト。「我慢比べだなと思ってたので、我慢できて良かった。(球数)制限とかは特にはなかった。ゲームの状況と対戦相手を見て、7回まで投げられたことは良かった」と納得顔を見せた。

誰も経験したことがない未曽有の事態。東京五輪の関係で例年より早い3月20日に開幕するはずが、約3カ月も遅れた。チームは5月8日に12球団で最後に活動再開。難しい調整を強いられたが「キャンプから積み上げてきたものは体に染みついていると思っていた。それをなくさないように、再開するまで自分のできることをやっていました」。ワインドアップからのフォーム変更を決断。ノーワインドアップ→セットポジションと試行錯誤を重ね、定めた照準へきっちりと合わせた。

記念すべき開幕戦だが、120分の1試合でもある。「過密日程は投手としてはしんどいですけど、どこの球団も一緒。ベストな状態で1試合1試合臨めるようにケアも含めて調整をやっていけたらと思います」。7年ぶりの日本一へ、1つ1つ勝利を積み重ねて行く。【佐藤究】