奇跡を信じた男を中心に、開幕2連勝を飾った。新型コロナウイルス陽性判定を受けて入院し、12日に退院した巨人坂本勇人内野手(31)が阪神2回戦(東京ドーム)で4打数3安打1打点。GReeeeNの「キセキ」が流れた第4打席に今季初適時打を放った。本塁打が出れば、サイクル安打の活躍で完全復活を印象づけた。新外国人ヘラルド・パーラ外野手(33)は来日初本塁打。球団通算6001勝目の軌跡を残した。

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「アリガトウや Ah…」。坂本は「そこの部分で、ファンの人とかが声を合わせて歌ってくれる感じとか好きなんですよね」。無人のスタンドに響き渡るメロディーに合わせ、第4打席に入った。第3打席までとは違う登場曲GReeeeNの「キセキ」。洋楽、HIP HOP…。いろんな音源に乗せ、キャリアを積み重ねてきたが、2年目から使用するこの曲は14年目でも変わらない。

2点リードの7回1死満塁。外角スライダーに腰をグッと落とし、左前へ運んだ。新型コロナウイルスで陽性判定を受けて3日から入院し、12日に退院したばかりのキャプテン。うまくいかない日だってある。それでも、開幕戦のスタメンに名を連ね、今季初安打を記録。2戦目でいきなりチーム唯一の猛打賞。3安打全てで得点に絡んだ。本塁打が出れば、サイクル安打だった。キセキが流れ、今季初適時打で初打点をマーク。それって「奇跡」?

坂本 昨日、今日といい雰囲気で、開幕と2戦目をとれたことはチームに勢いがつくと思います。明日、もう1つ、全員で戦い、勝てるように試合に臨みたいと思います。

入院していた病室では、満足なトレーニングをこなすことはかなわなかった。体幹トレーニング中心の日々も明日、今日より笑顔になれるように耐えた。球場で会えなくとも、ファンの存在があるから気持ちは晴れだった。開幕戦のミーティングで「いろんな人に感謝の気持ちを持って1年間戦っていきましょう」。言葉は、自然とあふれ出た。 まだ旅の途中。リーグ連覇、日本一という軌跡を残すための。最後の1秒まで、あきらめることはない。東京ドームの無人の外野スタンドには、応援ボードなどで「WITH FANS」の文字が記される。ファンと寄り添って-。未曽有のシーズン。通算2000安打には残り112本。今年はいつも以上に喜びも、悲しみも全て分け合っていく。【栗田尚樹】

▽巨人原監督(坂本について)「本来ならば、ちょっと疲れも、体の張りもあるんでしょうけれども、昨日よりはるかにスイングスピード、体のキレが出ているところに、並みではないなという感じがしますね」