阪神ジャスティン・ボーア内野手(32)が来日2号の決勝グランドスラムを放った。

3回に広島遠藤から右翼席中段へ運び、今季初の連勝に導いた。

開幕から18打席連続無安打と一時は悩みの底にいたが、前日4日の猛打賞に続いて復調の兆しだ。開幕から最下位にいるチーム浮上のカギはこの男が握る。6日も勝利して3連勝で甲子園に帰ってくるで~。

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すさまじい打球音が、無観客のマツダスタジアムに響き渡る。ボーアは確信して歩きだし、右翼の鈴木誠は1歩も動かなかった。「最高の仕事ができて良かったね」。3試合ぶりの2号は決勝の満塁弾になった。

失投を逃さなかった。3回。大山が押し出し死球で同点に追いついた直後だった。広島の先発遠藤に0-2と追い込まれ、3球目だ。ど真ん中に甘く入った129キロチェンジアップを振り抜いた。「追い込まれて、より一層集中したんだ」。打球は一直線に右翼席中段へ届いた。ベンチ前では代名詞のかめはめ波風ポーズ「ファイアポーズ」も連発。チームは12球団で唯一満塁機で安打が出ていなかったが、最高の形で負のデータを吹き飛ばした。

「バースの再来」と期待されながら、1年目のバースの開幕から15打席を上回る18打席無安打が続いた。対左腕には実戦38打席無安打と苦しみ、打開策を練ってきた。井上打撃コーチと行うスタンドティー打撃では、ボールを乗せるスタンドの高低、置く位置を内外角を細かく変える。同コーチは「『You Choice』と言われるから、俺が『多分この辺にくるよ』と思っているものを合わせてやっている」と明かす。メジャー通算92発の実績をかなぐり捨て、日本式のさまざまな配球に対応できるよう振り込んできた。3安打した4日の勢いを持ち込むような1発に、矢野監督も「やっぱり振りにいっている。どう対応するかというところが良くなってきている感じ」と評価した。

開幕から約2週間続く長期遠征。関西ではヘイリー夫人や、1歳に満たない息子ジミー君が待っている。「早く会いたいけど、テレビ電話で話をしているよ。子供が起きていたらできるだけ話をするようにしている。ナイターのときはだいたい寝ちゃっていて話せないけどね」。デーゲーム。起きている最愛の息子にパパの姿を見せられた。

ボーアの一振りで勢いづいた打線は、今季最多の1試合3本のアーチを懸け、ともに初となる連勝とカード勝ち越し。「まだまだ長いシーズンなのでこの勢いを続けていきたいね」。期待の大砲がようやく本領を発揮してきた。【只松憲】

▽阪神井上打撃コーチ(ボーアについて)「ああいう場面でばっかーんと打ってくれることは、首脳陣も望んでいる。たとえ後の打席で3三振したとしても、ああいうところで、打ってくれることを望んで試合に出している」

▼阪神打者の満塁本塁打は、19年5月29日巨人戦で、高山が代打サヨナラで記録して以来。外国人では、ロサリオが18年8月7日に巨人戦で打って以来、2年ぶり。

▼ボーアは来日50打席目の初満弾。阪神で日本球界にデビューした助っ人としては、ソロムコの53打席目(60年)を更新し球団最速となった。

▼ボーアの本塁打は、今季チーム満塁で延べ打者9人目にして初安打。前試合まで、12球団で満塁で唯一ノーヒットが続いていた。