ホットゾーンは逃さない。楽天浅村栄斗内野手(29)が得意の低めを捉え、両リーグトップの8号ソロを放った。ソフトバンク千賀の制御されたカーブを、豪快に左翼席まですくった。

3戦連発はいずれも低めだ。1発を放った試合の不敗神話は途切れたが、23打点も両リーグ断然トップ。新型コロナウイルスによる自粛期間が長期にわたっても関係なし。迫力満点の打撃を継続している。

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浅村が“絶好球”をショットした。1点を勝ち越された直後の3回1死。ソフトバンク千賀の初球、真ん中低めの124キロカーブ。モーションに合わせて目いっぱい引いたバットを、解き放ってしならせた。

快音を残し、打球は一直線に左翼席中段まで進んだ。「反応? そうですね。千賀みたいな投手は一番速い真っすぐに合わせて打たないと、どの球種も合わない。しっかりたまって反応できました」。3戦連発の8号ソロ。初回に161キロを投じた剛腕を苦笑いさせた。

網にかかった獲物は、一撃で刺す。4日から続く3発は全て真ん中から低めの球を仕留めた。「低めの球は、自分自身好きなゾーン。一番手が伸びるし、一番飛距離も出る」とポジティブなイメージを持っている。フルスイングが信条。「ホームランを狙っているわけではないし、ホームランを打ちたいと思って打席に入っているわけではない」と鍛え抜いた体を余すことなく使い切り、右に左にすっ飛ばす。

苦境に屈しなかったからこそ、リーグ2冠と好調を維持できている。新型コロナウイルスによる活動休止は3月30日から5月8日まで続き、12球団で最も長かった。球団施設を利用できず、生きた球を40日間見ることができなかった。「もどかしい気持ちでいっぱいでしたし、普通に野球をやることが当たり前に思っていた。野球ができないつらさを改めて感じました」。

耐え忍んだ。自宅や公園など限られたスペースを活用。自らの打撃動画でフォームの改善点を探り、5年目の13年から続ける10種類以上の体幹トレーニングも欠かさなかった。「マイナスに考えず、とにかくポジティブに。やれることをやるしかない」。右ひざが地面につきそうなほど豪快なスイングを、地道に築き上げた土台が支えている。

1発を放った際の不敗神話は切れた。1点を追う7回2死満塁。高橋礼の前に一邪飛に倒れた。「たまたま今はホームランが出ているけど、そういうタイプでもない。またしっかりヒットを打って、自分の役割を明日からやりたい」。勝利につながる一打だけを狙う。【桑原幹久】