山賊右腕が、湾岸の強風を切り裂いた。西武今井達也投手(22)が「王道の直球勝負」で7回2安打無失点で今季初勝利をもぎ取った。6四死球と課題も残したが、きっぷのいい内角攻めと、成長の足跡を示す我慢の投球で投げきった。チームも開幕戦以来、今季2度目の無失点勝ち。連敗を3で止めた。

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今井が前のめりで突っ込んだ。風速15メートル前後の強風に正面からあおられた。吹き飛ばされてたまるか。ベース板の上を通す直球で押し切った。2点にリードを広げた直後の6回。3四死球で1死満塁のピンチを招いた。打者井上に対し、捕手森から両手を突き出し「思い切って来い」とジェスチャーをもらい、サインにうなずく。「とにかくベースの上に強い真っすぐを」。外よりの149キロ直球で遊ゴロ併殺に封じた。

小さくまとまっても先はない。昨季は7勝9敗で黒星が先行した。防御率は4・32。目先の結果に執着し、スケール感を失いかけた。それは山賊の流儀に反する。主砲の山川から「やっぱり若いうちはパワーピッチングで相手を圧倒していくのがいいと思うけどな」と若き日のソフトバンク千賀を引き合いに出された。3年前、攻めの直球を武器に甲子園を制し、プロの門をたたいた。「やっぱりそうだよなと。僕は、もともとしっかりコース、高さにというような投手ではなかった」。進むべき道が明確になった。

軸が決まれば心の強さも生まれる。被安打2だったが、四死球、盗塁が絡み、いずれも得点圏に進まれた。右打者の外角球、左打者の内角球は直球、スライダーともに抜群の制球を貫いた。「内容がどれだけ悪くても、こういう風の中、7回を投げられた。すごく大事かなと思います」。荒々しさと我慢強さを同居させた。近未来のエース候補が、強風に舞う今季初白星をがっちりつかみ取った。【為田聡史】

西武辻監督(今井に)「こんな難しい風の中で良く投げたと思います。友哉がうまくリードした。エースとして引っ張っていく投手になってほしい、ならないといけない投手だから」