中日先発の松葉貴大投手(29)が、移籍後初勝利で一夜でチームを最下位脱出に導いた。今季初登板で6回途中まで1失点。救援陣が気迫のリレーで1点差を守り切り、オリックス時代の18年9月以来、666日ぶりの白星となった。

8回1死満塁の危機は福が乗り切った。最後はR・マルティネスが粘る梶谷を空振り三振に仕留めた。ベンチ最前列で祈るように見つめていた松葉に笑顔がはじけた。「ほんとはもっと早く勝ちたかったですけど…。ライデルが最後、三振を取ってくれた時は、こみ上げてくるものがありました」と声を震わせた。

東洋大姫路-大体大を経て、12年ドラフト1位でオリックス入団。主に先発で27勝を挙げ、昨年6月に松井雅&松井佑介との交換で、武田健吾とともに移籍した。だが、登板機会は9月の先発1試合のみで、この日と同じDeNA戦で2回2/3でKO。チームメートとのコミュニケーション不足も痛感した。秋のキャンプではチーム内で積極的に会話を交わすことを心がけ、春先結果が出ない時は2軍コーチ陣にも支えられた。

「苦しかったけど、コーチにも声をかけていただいたことで、自分のボールが投げられるようになった。2軍にいたことはマイナスではなくプラスでした。みんなの思いを背負って投げました」。チームに溶け込む中で持ち味を思い出した。カットボール、チェンジアップをコーナに決め、タイミングを外した。打たせて取る投球で6安打無四球。「どんどんストライクを取りいく」というバッテリー間の決め事も守った。連敗を3で止める価値ある勝利。下位に沈むチームの救世主になる。【安藤宏樹】

 

中日与田監督(松葉について)「このところ、ウチのピッチャーができてなかった勇気を持って、ストライクを取っていくということを実践してくれた。2軍で苦しい思いもしたでしょうし、それを支えていい状態にしてくれたコーチ陣にも感謝したい」