待ってたで! 阪神高橋遥人投手(24)が今季初登板初先発で大仕事をやってのけた。巨人打線を相手に自己最多の11三振を奪う快投。7回3安打無失点で349日ぶりの白星を手にした。開幕ローテーション入りが期待されながらも、左肩コンディション不良で2軍スタート。遅れてきた左腕が今季2度目の巨人戦同一カード3連敗を阻止した。

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たった1度だけ訪れたピンチで、左腕は冷静だった。高橋はひと呼吸置くと、思い切り腕を振った。5回2死一、三塁。149キロの高め直球に、陽岱鋼のバットは空を切った。「っしゃー!」。ガッツポーズする梅野と一緒に感情があふれ出た。プロ3年目で自己最多となる11個目の奪三振。それを今季初先発、しかも巨人戦でやってのけた。

「絶対抑えるぞと思って行ったんですけど、めっちゃ緊張しました。鳴尾浜でいろんな人、トレーナーさんにもすごくお世話になったので、そういった人のために今日は思い切って行きました」。ボールはさえ渡った。2回大城から4回北村まで5者連続三振。7回3安打無失点と巨人打線を圧倒した。「本当に出来すぎってくらい、ストレートもツーシームとかも一番良かったんじゃないかなと」。昨年8月23日ヤクルト戦以来の白星は、同一カード3連敗を阻止する大きな勝利となった。

開幕ローテーションの軸として期待されながら、左肩のコンディション不良で2軍スタート。「1年目のほうが(ブランクは)長かったので」と前を向けたのは、投げられない苦しみを知っているからだ。

プロ1年目は4月に初登板初勝利と華々しいデビューだったが、その後は左肩やひじの不調で長いリハビリ生活を送った。「もう投げますよ!投げろって言われたら、投げられますよ!」。痛みと思うように投げられない悔しさ。つい投げやり気味にトレーナーに言ったことがあった。「やっぱり投げられないのが一番、もどかしいというか、何してるんだろうっていう気持ちになります」。支えてくれる周囲への感謝、そして、また力いっぱい投げたいという強い気持ち。その思いが原動力だった。

プロ2年目の昨季は、プラス思考の先輩たちから教わった。青柳は切り替えが早く、いつも前向きで周囲に気を使わせない。西勇には「投げられるだけで、幸せだろ」と言われた。「確かにそう思ったほうがいい。投げられない時のことを考えたら、すごく思い切って腕を振れる。すごく楽しく出来ます」。喜びをマウンドで体現した。

活動停止期間から始めた日記。久しぶりの甲子園のお立ち台で、この日は何を書くかと聞かれた。「自分でナイスピッチ、って書いて終わります」。高橋の復帰を待ちに待った矢野監督も「本当にその期待通り、素晴らしいピッチングでした」と絶賛。明るい流れを呼び込むナイスピッチングだった。【磯綾乃】

○…「ファンともっと!」プロジェクトの一環で、この日のヒーローインタビューではファンから募集した質問にも答えた。「打席登場曲を鈴木雅之さんの『違う、そうじゃない』にした理由は?」という質問に高橋は「この曲は知っていたんですけど、登場曲を書く欄に知らない間に岩崎さんが勝手に書いて、発表した時に自分は知りました。以上です(笑い)」とまさかの裏話。観客からも笑いが起こった。

巨人原監督(阪神先発高橋に7回無得点。手のつけられない投球をされたかと問われ)「そうですね。もう、その言葉でいいんじゃないの」