若きイケメン右腕がソフトバンクの窮地を救った。首位を争う楽天に連敗して迎えた一戦で、2番手の板東湧梧投手(24)が3回無失点の好救援。2年目でプロ初勝利を手にした。工藤公康監督(57)が「オープナー」笠谷を起用し、1番松田宣、2番バレンティンという奇襲オーダーを組んだ執念采配を実らせ、7月全敗で5連敗中だった木曜日の呪縛を解いた。

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杜(もり)の都の涼しい夜風よりも、爽やかな風が吹き込んだ。2年目右腕の板東が好救援で、楽天強力打線の勢いを止めた。「ますは1勝できてうれしい。リーグ優勝できるよう、少しでも戦力になれるように頑張ります」。ウイニングボールを手にし、端正な顔から笑みがこぼれた。

同点に追いついた直後の3回に登板。3番ブラッシュ、4番浅村、5番ロメロの並びを3人で抑えると、4回に味方が2点を勝ち越した。4回1死一、二塁のピンチもさらっと切り抜け、5回は1死一塁で浅村を併殺打。「とにかく1個ずつアウトを取るつもりで、丁寧に投げました」。3回1安打無失点とテンポのいい投球でチームの連敗は止まり、単独首位に舞い戻った。

ルーキーだった昨年は開幕ローテーション争いをしていたが、オープン戦期間中にインフルエンザにかかり離脱。4月にも2度目のインフルエンザに感染するなど、1軍登板なしに終わった。その間に、甲斐野、杉山、泉、奥村と同期入団で自分以外の投手が全員1軍デビュー。悔しさをバネに迎えた2年目。新型コロナウイルスの影響で自主練習だった期間には、体をひねる投球フォームに改良。5戦目でプロ初勝利を手にした。

7月は全敗で5連敗中だった「魔の木曜日」。工藤監督は執念の采配を振った。打線は1番松田宣、2番バレンティンという“奇襲”オーダーを採用。3回1死一塁では松田宣が泥臭く内野安打でつなぎ、柳田の同点適時打を呼び込んだ。悩みの種だった先発ローテーションの谷間に笠谷を起用。バトンを受けた2番手板東が好リリーフで応えた。

チーム内では1日から選手やスタッフに新型コロナウイルス感染者が出て、揺れ動いた数日間だった。その1日以来、5日ぶりの勝利。工藤監督は「おととい、昨日と嫌な負け方だった。どんな手を使っても、取りたいと思っていた」。ここから仕切り直して楽天を突き放す。【山本大地】

◆板東湧梧◆ ばんどう・ゆうご。1995年(平7)12月27日、徳島県生まれ。小2から投手兼遊撃手として野球を始める。鳴門3年時に春夏甲子園出場。JR東日本から、18年ドラフト4位でソフトバンク入り。20年7月14日オリックス戦でプロ初登板した。181センチ78キロ、右投げ右打ち