キャプテンは、やっぱり頼りになる。1年ぶりに1番に入った巨人坂本勇人内野手(31)が、不振を払拭(ふっしょく)した。第2打席に20打席ぶりの安打となる8号2ラン、第4打席には9号ソロ。7月30日DeNA戦以来の3安打をマークした。打線にも波及効果を与え、移籍後初の6番に入った丸佳浩外野手(31)も26打席ぶりに安打。昨年5月4日以来の「サカマルコンビ」解体となったが、チームの連敗も3でストップ。坂本を中心に熱い巨人が戻ってきた。

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「らしい」姿が、東京ドームの打席にあった。1点を追う2回2死二塁。坂本がかち上げた打球は、ライナーで左翼スタンドへ着弾した。20打席ぶりの安打。5日の阪神戦以来の一打に「まずはホッとした」と言ったが、そこで終わらない。4点リードの6回には、左手1本で左翼スタンドへ大きな放物線を描き、9号ソロとした。試合前まで18打席無安打だった。それが、うそかのように、不名誉な数字とおさらばした。

昨季5月4日以来466日ぶりの1番として送り出され、完全復活を物語る3安打。「1番バッターを任されたというのは、何とかしてくれというそういうふうに感じて」と愚直に結果で応えた。9日中日戦でもがむしゃらな姿があった。同点の8回先頭。結果は投ゴロとなったが、セーフティーバントを試みた。球場がどよめいた。坂本は「先頭だったし、相手は左ピッチャー。三塁の守備位置も後ろだったから」と振り返ったが、何かを変えようとする気迫がそこにはあった。

原監督は、そんな1シーンに09年WBCのイチローと姿を重ねていた。大会前の強化試合から不調だったイチローは、第2ラウンドは最初2試合で9打数無安打と苦しんでいた。敗者復活のキューバ戦。無死一塁でセーフティーバントを失敗した。現状を打破したい気持ちを受け止める一方で-。常に最前線で結果を出し続けてきたイチローだからこそ、坂本だからこそ、一流に求める姿は“普段通り”だったのかもしれない。

坂本自身も、分かっている。「8月というかは、今年は始まってからずっとしっくりきていない。練習でも。今年はそういう中で、何とか結果を残さないといけない」。好不調の波があれば、チームだって連勝も連敗もある。それでも次の試合はやって来る。戦い続け、先頭を走り、14年目のキャリアを積み上げた。明日もまた「らしい」プレーに徹する。【栗田尚樹】

巨人原監督(1番坂本に)「1番打者は非常に重要なポジション。いろいろな人を入れましたけど、なかなか機能しなかった。全体の歯車、つながりという部分で、何とか勇人にね」