広島への移動試合前の羽田空港で、監督通算1054勝を積み上げた巨人原辰徳監督(62)が勝負師としての「哲学」を口にした。

「勝負で一番いいのは(力関係が)6対4の勝負よ。相手に4を与えるというね。10対0がいいと思うじゃない。いや、違う。ギリギリのところで勝つという勝負が、次につながる。その勝利が成長させていく」

圧倒的な力の差より、競った勝負に勝ってこそチームの力は上がる。失敗も糧にできる。「6対4理論」は数年前、知人の経営者から授けられたビジネス界を生き抜く金言。それを勝負の世界に置き換え、今季は身に染みて感じるようになった。「そう思ったらピンチが来ても『おー、来た来た』となる。ピンチを怖がる人は、10対0を求めている。勝負は6対4で前に進む方がいい。難しいんだよ。哲学だよな」。

先発田口は1回に5点を先取された。圧倒的な負け試合でも、指揮官は「何とか立ち直って欲しい。うちの2番手、3番手くらいのピッチャー」と、中継ぎの負担も考慮して6回まで続投させた。移動試合前のシートノックはコンディション優先で坂本らは参加しなかった。試合機会に飢えた途中出場組を中心に9回に4点を奪い2点差に追い上げた。敗れはしても、次の一手への準備は怠らない。

前日の試合を終えた時点で、チームは50試合を消化して30勝。くしくも、原監督が求める「6割」の勝利数にピタリと重なった。勝敗数もほぼ「6対4」で推移。「勝負というのは表裏で決まる。合気道のように相手の力を自分の力にしてしまう」と長いシーズンを見据える。31勝目はお預けだったが、ぶれない信念で進んでいく。【前田祐輔】