右肘のコンディション不良から再起した阪神桑原謙太朗投手(34)が、約1年半ぶりのホールドで完全復活をアピールした。緊迫の1点リードで2/3回をピシャリ。元セットアッパーが勝利の方程式に帰ってきた。

6回。先発秋山が梶谷を中飛に打ち取った直後、矢野監督が動いた。「(打順が)3周り目になるところでてんびんにかけた時に、桑原の投球でしのぐという選択をしました」。プロ13年目の右腕に大きな使命が託された。

先頭のソトをスライダー2球で左飛に打ち取ると、オースティンにも宝刀スライダーを次々投げ込んだ。直球は1球のみ。最後は7球目、外高めの136キロスライダーで遊ゴロに仕留めた。「いい場面で投げさせていただきましたし、2人で抑えることができたのでよかったです」。時間にして約4分半ながら、前日2人で3発を放った助っ人コンビをなで斬った。今季登板8試合目、昨年4月17日ヤクルト戦(神宮)以来のホールドでDeNAに流れを渡さなかった。

矢野監督も「一番緊張する場面でね。桑原もすごいあの2つのアウトは緊張するし、価値のある2つのアウト」とねぎらう大仕事。桑原からエドワーズ、藤浪、スアレスとつなぎ、無安打無死四球の完璧なリリーフで、1点のリードを守り抜いた。チーム内の新型コロナウイルス感染の影響で、岩崎や岩貞らブルペンを支えてきた投手陣が今はいない。ガンケルが先発した前日10日には、外国人枠の関係でボーアを外し中継ぎのエドワーズがベンチ入り。そんな苦しい台所事情の中で桑原の働きは光った。

17年は67試合に登板し、最優秀中継ぎ賞を獲得。18年も62試合に登板したが、昨年4月下旬から右肘のコンディション不良で2軍調整を続けた。実戦復帰したのは今年6月。オフから毎日、鳴尾浜で右肘のケアは欠かさず、実直な性格でひたむきにリハビリに励んできた。チームの緊急事態で巡ってきたチャンス。ベテランの存在感をしっかり示した。【磯綾乃】

◆桑原の浮沈 

津田学園(三重)を経て奈良産大から07年大学生・社会人ドラフト3巡目で横浜に入団した1年目の08年は、8月の阪神戦で初完投初完封するなど、先発と中継ぎで30試合に登板した。だが故障もあり、09年からの2年間は29試合にとどまり、10年オフに一輝とのトレードでオリックス移籍。だが新天地でも1軍登板は4年間で22試合にとどまり、大半を2軍で過ごした。14年オフに白仁田との交換で阪神に移籍。1年目の15年は6試合、16年は初の1軍0に終わったが、17年に自己最多の67試合に登板して4勝2敗39ホールドで最優秀中継ぎ賞を獲得。推定年俸は800万円から3700万円増の4500万円に跳ね上がった。アップ率463%は当時の球団日本人最高で、18年も62試合に登板した。だが昨季はコンディション不良で7試合にとどまった。