編成面の責任も担う“全権監督”として指揮する巨人原監督は、選手を「夢追い人」と表現する。現役時代は限られた時間。だから他球団で活躍するチャンスがあるなら移籍の背中を押すケースがある。編成を主導する大塚淳弘球団副代表(61)は、シーズン中に4件成立させたトレードの目的について3点を挙げた。

「1つ目に自チームの戦力補強。2つ目に出場機会が減少した選手を他の球団で生かす道を探す。3つ目に自球団の選手を安住させないことがある」

ウィーラー、高梨らの加入は、チーム内を刺激、活性化する効果もあった。

「選手が一番怖いのはライバル。トレードを行うことで、選手に危機感を植え付けることができます。チーム内にレギュラー選手を脅かす選手がいないとチーム力は落ちる。主力選手であっても絶対に安住させてはいけないんです」

チーム内競争を促すのは1軍だけではない。球団方針を「選手の発掘と育成」にシフトし、23年まで5カ年計画で編成戦略を練る中、育成選手中心の3軍やファームの構造にもメスを入れようとしている。

「縁があり、入団した選手は球団の『宝』。しかしチームを編成する上で非情にならなければならない。これまでは戦力外選手を決める時、可能性に期待して残留させる傾向が強かったが、それは選手本人、球団にとっても何のプラスにもならないのではないか」

現在の支配下登録選手は69人で、来季は61~62人程度からのスタートを目指す方針。ドラフトで7選手指名したため、14人前後を戦力外にするか、育成選手として再契約する可能性がある。大塚球団副代表自身、ドラフト外で入団し1軍登板がないまま引退。2軍マネジャーや営業担当などを歴任し、18年10月から現職に就いた。「今年は発掘と育成の元年。血の入れ替えは必要」と公言してきた。

育成選手は現在の21人から、新たに過去最多12人をドラフト指名。これまで3軍戦を開催するため人数合わせのように在籍させた枠を撤廃する。個々の将来性をシビアに見極め、入れ替えを断行。チーム全体に徹底的な競争意識を芽生えさせ、底上げを図っていく。

伝統球団として毎年優勝を求められる使命を背負いながら「育成」と「結果」の両輪を追う。近未来の新しい巨人の理想像を掲げて戦い、連覇を果たした。

「力のある選手、将来性ある選手を集めても、期待通りに活躍、成長する可能性は低いです。選手を生かすも殺すも、それを束ねる監督次第。原監督は選手のモチベーションを上げて、個々の力を最大限に発揮できる指導力がある。勝つために妥協しない厳しさがある。発する言葉はチームに勇気を与えて、大きな力になる。スタッフ、フロントすべての人が『優勝』に向かって1つのチームになっていることが大きい」

グラウンドで戦う現場、バックアップする組織が団結し、38回目の頂点に立った。(終わり)【前田祐輔】