オリックス山崎勝己捕手(38)が、ファンやチームメートの温かなねぎらいに送られ、現役生活に別れを告げた。試合前に京セラドーム大阪内で引退会見に臨み、試合には8回1死で代打で登場した。オリックスナインの拍手に背中を押され、最後はベンチ前で中嶋監督代行に「バントはないぞ」と言われ、ネクストバッターズサークルへ。ベンチを出る際は笑顔だったが、次第に涙がこみあげた。愛用してきた登場曲、フジファブリックの「徒然モノクローム」が場内に響く中、打席に入る前にまず三塁側の日本ハムベンチに向かって丁寧に頭を下げた。

涙があふれそうになるのをこらえ、打席に入った。初球は日本ハム杉浦の147キロ速球を空振り。「ソフトバンクの立花コーチに最初に教わったのが『初球から振っていけ』だったので、振って行きました」と初球フルスイングを貫いた。2球目の直球を捉えたが、三塁ゴロに。それでも懸命に一塁に走った。

9回はそのままマスクをかぶり、鈴木と最後のバッテリー。スタンドには「HOTOKU」のユニホームを掲げるファンの姿もあった。「宮城の初勝利がかかっていたんで、緊張感3倍増しました」。2死から太田に左翼フェンス直撃の二塁打を打たれ「正直、(スタンドに)行ったと思いました」とヒヤリ。続く中田にも中堅フェンスぎりぎりの大飛球を打たれたが、佐野がしっかり捕球。体の力を緩め、プロ初セーブを挙げたマウンドの鈴木をねぎらった。ベンチ前に戻ると、中嶋監督代行に抱きしめられた。

試合後は、この日引退を発表した小島、松井佑と場内を1周。何度もバッテリーを組んだ比嘉、ディクソンから花束を手渡された。「長く一緒にやってきた2人からいただけて、(いい)チョイスですよね」と人選に感謝。最後は仲間たちの手で、ホームベース上で胴上げされた。

「オリックスに来て、小谷野さんや小松さんらの引退試合をね、素晴らしい成績を残している方々で、自分なんかが試合に出させてもらっていいのかなという思いもありましたが、本当に思い出に残ると思う」としみじみと語った。ただ山崎勝自身も、緻密なリードと人望でファンの記憶に残る選手だった。