ヤクルト1位指名の慶大・木沢尚文投手(4年=慶応)がマウンドを降りた直後だった。9回2死一塁。早大・蛭間の打球がバックスクリーンに吸い込まれ、目前にあった優勝が吹っ飛んだ。「走者を出すことを嫌がらず、堂々と投げてくれ」。降板時、木沢がこう声をかけた生井惇己投手(2年=慶応)が、マウンドでうずくまった。

連投のエースは8回に7人目で登板した。この日も150キロを記録。5人を打ち取り、9回2死としたところで安打された。堀井哲也監督(58)が交代を告げる。次打者は木沢が1回戦で勝ち越し2ランされた蛭間だった。「私がそう判断したんですが、選手に申し訳ないと思っています」。8人目の起用が裏目に出た継投を振り返った。

試合後、涙の止まらない生井が木沢を見つけると、頭を下げてきた。「お前の責任じゃないよ」。あと1人として走者を出した自分を責めた。「僕が投げた試合でこうなった。申し訳ない気持ちです」。

大学最終登板は悔しい逆転負け。その舞台はヤクルトの本拠地でもある。「投手として詰めが甘かった。ただでは転ばない、と思ってやりたい」。木沢が次なるステージでのリベンジを誓った。【米谷輝昭】

▽慶大・瀬戸西純主将(4回に勝ち越し打を放ち、優勝を目前にしながら逆転負け)「勝っても負けても最後の試合。ベンチに入れない選手の分も勝って終わりたかった。早大の粘りが上だった。悔しいです」