左腕に使命を帯びた。来年で東日本大震災から10年。早大・早川隆久投手(22)が楽天のドラフト1位ルーキーとして特別な1年に臨む。「僕も津波を経験しました。いい縁ではないと思いますけれど、そういう使命の元に東北楽天ゴールデンイーグルスさんに指名をもらったのかなと思います」。2011年3月11日の記憶を鮮明にたどった。

千葉外房の海沿いに位置する山武郡横芝光町。上堺小6年の早川は卒業準備で教室にいた際に被災した。「小学校が避難場所なので家に帰らず一晩過ごしました」。翌朝。港近くに戻る道中、津波被害を目の当たりにした。「すごく悲惨な光景で、もん絶する状況でした」。堤防は崩れ、水が町を覆う。高台にあった実家も床上浸水し、農機具は水没した。

2年後の13年。田中が胴上げ投手となり、楽天が日本一。「誰かのために頑張ろうとなると、力を発揮できるんだなと感じさせてくれました」と勇気を得た。時を経て楽天のユニホームへ袖を通す立場になった。「なかなか思うように生活できていない人もまだまだいると思うので、支援していければ」と復興活動へ強い意欲を見せる。「野球という形で勇気を与えられる選手になれれば」。導かれた東北の地で夢を届ける。【桑原幹久】